最近、国際気候NGOであるスティールウォッチが『日本製鉄 気候変動対策の検証2025』という報告書を発表しました。この調査によると、日本製鉄は2040年までに必須となる温室効果ガスの大幅な削減が見込まれているにもかかわらず、思ったようには進んでいない現状が明らかになりました。報告想定から評価を書いていますが、その結果はかなり厳しい内容になっています。
報告書によると、日本製鉄は国際競争力を持ちながらも、脱炭素化には向かわず、依然として時代遅れの石炭焚き製鉄を続けているという指摘がされています。具体的には、年間2500万トンという大規模な石炭消費を続けており、さらにオーストラリアのブラックウォーター炭鉱にも投資を行い、生産能力を拡大させているのです。このような炭鉱への投資は、鉄鋼事業そのものが石炭ビジネスに依存している証拠とも言えます。
現在、日本製鉄が持つ排出削減目標は、2030年までに2013年比で30%削減するというものですが、これも他国の基準から大きく後れを取っています。特に、日本全体の国家目標は2035年までに60%削減に引き上げられているため、長きにわたって温室効果ガスの排出を続けることはできません。
技術面でも、同社が掲げるSuper COURSE50技術の排出削減は早くとも2040年代に入らないと達成できない見込みで、こうした進展は気候変動に向けた責任を果たしているとは言えません。
スティールウォッチのアジア担当者であるロジャー・スミス氏は、「日本製鉄が石炭から脱却しない限り、真の気候変動対策にはならない」とも述べています。これに対し、日本製鉄は現在進められているグリーン認証への取り組みを強化し、需要の高まりに応えようとしているようですが、これは本来の脱炭素化に向けた取り組みには程遠いものです。
株主の中からは気候変動に対する具体的な対策を求める声が上がっており、2024年の定時株主総会では日本製鉄の気候変動に関する提案が初めて提出されました。この提案には、短期から中期にかけての温室効果ガス排出削減目標の改善が含まれており、現行の取り組みでは対応できないという厳しい意見が並びました。
日本製鉄には、石炭を用いた製鉄からの完全な脱却を目指し、グリーンな鉄鋼生産技術への移行のための新たな進展が求められています。再生可能エネルギーを用いる新たなサプライチェーン構築の可能性も含め、今後の行動が大きな注目を集めるでしょう。2030年代を目処としたより厳しい目標設定と、低排出技術の導入を積極的に進める姿勢が求められています。真に持続可能な未来を築くためには、より大規模な変革が必要です。日本製鉄がどのようなアクションを起こすのか、その動向を見守る必要があります。