異色の旅行記『迷宮ホテル』
フリーカメラマンの関根虎洸氏が10年以上をかけて編纂した旅行記『迷宮ホテル』が、2025年8月26日に発売されました。本書は、世界中の歴史的なホテルや街を巡り、各地に息づく「いわく」を探る異色の旅の記録です。
写真で描く歴史の足跡
著者は、福建省の客家土楼から始まり、ザンジバル、上海、香港、スリランカ、マラッカ海峡に面するマレーシア、タイ、シンガポール、インドネシアを訪問。160点を超える圧巻の写真と共に、各地での体験を深く掘り下げています。
厳選された宿泊地
本書の魅力は、著者が宿泊した古いホテルの数々にあります。例えば、「土楼の王」と呼ばれる福建省の承啓楼では、春節の伝統的な結婚式の取材を行ったり、ザンジバルでは、180年の歴史を持つ豪華な部屋に宿泊して、街の日常を撮影しました。そこには過去の奴隷市場の痕跡や、日本人娼婦が暮らした部屋も描かれています。
上海マフィアと民主化運動
上海では、アヘン王杜月笙の足跡をたどり、香港では2019年の民主化運動の渦中にいるチョンキンマンションに宿泊。実際の様子を見せることで、そのリアルな歴史を記録しています。
建築家・ジェフリー・バワの足跡
スリランカでは、「熱帯建築家」として知られるジェフリー・バワの代表作を巡ります。バワの作品は、内外が調和した構造が特徴で、その魅力を蘇らせています。特に、彼の理想郷とされるホテル「ヘリタンス・カンダラマ」や、ルヌガンガのグラスルームなど、設計の裏側をも垣間見ることができるのです。
プラナカン文化の魅力
関根氏はまた、プラナカンという文化の足跡も追います。中国南部から移住した人々が生み出した独特の文化は、マラッカ海峡沿岸部で見られます。彼らの習慣や生活様式を掘り下げ、古いホテルや街並みを通じて、その多面的な文化を視覚化しています。
幾重にも重なる思い出
本書は関根氏が愛読してきた書や映画とも交錯し、深いメッセージを届けます。『深夜特急2』や映画『ザ・ビーチ』に描かれた様々な記憶が、彼の旅行体験の中で、鮮やかに蘇ります。
まとめ
『迷宮ホテル』は、ただの旅行記にとどまらず、時間と空間を超えて人々の思いと歴史をひも解く深遠な作品です。著者は、写真と文章を通じて、読者に異なる文化や歴史を体感させることでしょう。この充実した旅行記を手に取り、未開の地への情熱を感じてみてください。