能登半島地震後の心のケアを支援する「ブリッジ」
認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都中野区、代表理事:今村久美)は、子どもたちが直接相談できるチャット相談窓口「ブリッジ」を運営しています。このサービスは、能登半島地震で大きな影響を受けた石川県珠洲市と能登町と連携し、自治体内の全小中学校の生徒が利用できるようになっています。
この取り組みは、度重なる災害による心のケアの重要性を背景にしています。実際、文部科学省の調査によると、過去の東日本大震災時には被災地の約10%の子どもが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を示していたことが明らかになっています。1年が経過した今、PTSDの症状が現れやすくなる時期であり、今こそ特に子どもたちへのサポートが求められています。
学校には多くのスクールカウンセラーが派遣されていますが、その支援は限られた期間のため、常駐によるケアが難しい状況です。このために、日常的な相談は教員が担うことになりますが、彼らもまた被災者であることが多く、大きな負担に直面しています。子どもたちからは「元気そうに見える子でも悩みを抱えている」との声も寄せられ、「どう寄り添えば良いのか分からない」という悩みも共有されています。
そんな中、カタリバが提供する「ブリッジ」は、学校から配布されたタブレットやPCを通じて利用できるチャット相談窓口です。
2023年より、まずは石川県加賀市との連携で、導入から半年間で約1100件の相談が寄せられ、その中には緊急性の高い事案も含まれていました。特に、学校側では把握していなかった事例が多く、オンライン相談による視界の拡大が期待されています。
最近では、珠洲市と能登町が名を連ね、両自治体の小中学校に通う生徒たちが「ブリッジ」にアクセスできるようになりました。導入から間もない現在、64件の相談が寄せられています。相談内容としては、「部活に前向きに取り組むには?」や「友達がいない」といった悩みの声が劇的に高まっています。
特に心を打つのは、いじめの相談です。「いじめをする人がいて、先生に言うと自分がいじめられるかもしれないと思ったけれど、ブリッジに相談して悩みが解消した」と語る子どももいます。このことは、子どもたちが安全に相談できる環境が必要であることを物語っています。
また、この「ブリッジ」は子ども向けだけでなく、保護者を対象にした「災害時こそだてサポート」も立ち上げています。これにより、被災した地域の大人も心のケアを受けることができます。実際に珠洲市の担当者は、「心が傷ついた大人も多く、子どもの変化に少しでも早く気付くために、支援を続けていきたい」とコメントしています。
カタリバ側からも、相談チャット事業の責任者である藤井氏は、「ブリッジの運営開始から一年が経ち、子どもたちの心の悩みを知る重要性を感じています」と述べています。子どもたちは周囲に心配をかけたくないという強い思いを持っており、そのために「ブリッジ」キャラクターを活用した相談窓口は非常に効果的とされています。
震災から一年が経った今、どんな状況でも気軽に相談できる環境を整えることが重要です。子どもたちの心のケアをしっかりと行い、少しでも安心して日常生活を送れるよう願っています。今後も「ブリッジ」を利用して自分の思いを話せる、そんな場を提供し続けていきたいと思います。
この取り組みが、被災地に住む子どもたちの心のケアにどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目です。