九州地方では、2023年7月1日から大気が霞んでいる状態が続いており、その主な原因として新燃岳の噴煙が挙げられています。福岡市内での地上観測では、Suspended Particulate Matters(SPM)やPM2.5の濃度、さらには火山性ガスに含まれる二酸化硫黄(SO2)の濃度がいずれも増加していることが確認されました。この現象は、広範囲にわたる大気環境に影響を及ぼしており、人工衛星による観測でも前例のない規模のSO2濃度の上昇が観察されています。
シーロメータを使用した計測によると、7月1日の深夜頃から、高度1キロメートルの地点でエアロゾル濃度が著しく高く、この層が地上1キロメートル付近にも広がっていることがわかりました。これらのデータは、火山活動による影響を示す重要な要素となっています。
福岡大学で行われたエアロゾル試料の観察・分析結果からは、火山灰粒子はそれほど多く観察されず、代わりに多数の硫黄を含む粒子が見つかりました。これは、新燃岳から放出された二酸化硫黄が大気中で化学的な変化を経た結果、硫酸塩エアロゾルとなっていることを示しています。
気象データの解析によれば、九州地域では広範囲に高気圧が停滞し、新燃岳の噴煙が大気中に留まりやすい状態が続いていると考えられます。そのため、九州地方から西日本地域にかけて大気環境に影響を及ぼす結果となりました。
福岡大学では、今回の煙霧現象について、PMの成分やガス成分に関する詳細な観測を継続して行う予定です。この研究を通じて、地域の大気環境への影響を理解し、将来的な対策に活かすことを目指しています。
大気の霞みは、特に農業や健康にも影響を与える可能性があるため、引き続き注意深くモニタリングしていく必要があります。新燃岳の噴煙が及ぼす影響についての知識を深め、地域住民に対する適切な情報提供が求められています。特に夏季においては、気象条件が変化しやすいため、今後の観測データについても注視する必要があります。
このような背景から、新燃岳の活動や大気環境に関する情報は、地域のみならず広域な関心を持たれるテーマとなっていくことでしょう。福岡大学は今後も観測と研究を重ね、地域の安全を確保するための取り組みを続けていきます。