大阪・関西万博での気象予測の重要性
2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、政府機関や大学、民間企業など6者が連携し、高精度気象予測情報の提供を目指す取り組みが始まりました。このプロジェクトでは、最新の技術を活用し、ゲリラ豪雨などの極端な気象事象から来場者の安全を守ることが目的です。
取り組みの背景
近年、短時間に集中して降る大雨の発生が増加しています。このような気象は、場合によっては重大な被害をもたらすため、早急な対策が求められています。特に、大阪・関西万博のような大規模イベントでは、来場者の安全管理が最も重要な課題となります。そこで、豪雨の卵を早期に検知し、その農雨の規模や位置を精度高く予測することが求められています。
次世代気象レーダー「MP-PAWR」の導入
本プロジェクトでは、「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(以下、MP-PAWR)」という次世代の気象レーダーが導入されます。このレーダーは、高速かつ立体的に雨雲を観測できるため、豪雨の早期検知が可能です。従来のレーダーでは雨粒が電波を遮るため観測精度が低下することがありましたが、なおかつ複数のMP-PAWRを駆使することで、これを克服し高精度なデータが得られるようになりました。
スーパーコンピュータ「富岳」の活用
さらに、コンピュータサイエンスの分野では、日本のスーパーコンピュータ「富岳」が重要な役割を果たします。万博期間中、このスーパーコンピュータを利用して豪雨予測モデルの精度を高め、リアルタイムでの気象予測を実施します。この取り組みは、世界初の試みともなり、他の国々からも注目されています。
実証プロジェクトの具体的な内容
2025年4月から10月の万博期間中、2台のMP-PAWRが設置されることにより、関西エリアの気象データが収集されます。具体的には、兵庫県神戸市と大阪府吹田市に設置されたレーダーが協力し、データをリアルタイムで収集。これらのデータは、防災科学技術研究所によって高精度の三次元雨量推定技術が適用され、さらに株式会社Preferred Networksが開発したデータ圧縮・配信プラットフォーム「きゅむろん」を通じて迅速に観測データが配信されます。
来場者への通知機能
観測データをもとに、ゲリラ豪雨検知アプリ「3D雨雲ウォッチ」が開発され、来場者に対して豪雨のリスクを通知します。具体的には、30mm/hを超える豪雨が予想される際には、最大15~30分前にプッシュ通知が行われる仕組みとなっており、来場者は安心してイベントを楽しむことができるでしょう。
取組みの今後の展開
このプロジェクトは、単なる万博の枠を越えて今後の気象予測技術の発展にも寄与することが期待されています。より多くの人々が安全にイベントを楽しめる環境を整えることは、他の大規模イベントに向けた重要な前例ともなりうるのです。万博終了後には、得られたデータの解析やフィードバックを通じて、さらなる技術向上が図られるでしょう。
このように、大阪・関西万博における高精度気象予測の実証は、技術革新と公共の安全が見事に融合したプロジェクトであり、今後に大きな期待が寄せられています。