ひきこもり回復のために必要な信頼と理解
ひきこもりは多くの家庭で見られる問題ですが、その根本的な原因や支援方法は多様です。著者の桝田智彦氏は自身の経験を基に、ひきこもりからの回復における親子の信頼感の重要性を説きます。
親の支えが生む回復への道
桝田氏は、本人がひきこもりになる背景には無意識のうちに蓄積されたトラウマや、生活へのエネルギー切れがあると指摘しています。その中でも特に重要なのは、親子の信頼関係です。著者は、人の心の成長には親の存在が不可欠であるとしています。親がどれだけ支えてくれるかが、子供の心の成長に大きく影響します。
ひきこもりの心理を解きほぐす
ひきこもりの対象は、少しでも親を気にしすぎてしまう「いい子」であることが多く、そんな子たちが「もうダメ」と感じる瞬間に家にこもりがちです。桝田氏は、親が子供の気持ちを理解し、安心して休める場所を提供することが大切であると指摘します。そのためには、まずは就労や就学のサポートよりも、「安心してひきこもらせる」ことから始めるべきだと言います。
5つの段階を通じて回復へ向かう
著書では、ひきこもりからの回復を5つのプロセスで説明しています。それは「希望」から始まり、「意思」、「目的」、「有能性」、最後に「アイデンティティ」に至るという流れです。それぞれの段階では、親がどのように関わることができるか、また具体的な取り組み方が述べられています。子供の発する言葉の裏にはどんな意味が隠されているのか、そういった理解も深めていける内容です。
理論に基づいた心理的アプローチ
書中には「無条件の肯定」や「親の正論は百害あって一利なし」といった、初めて耳にする人には理解しがたいフレーズも多くあります。しかし、これらを通じて、桝田氏は通読するうちに、親子の関係がどれほど重要であるかを感じ取ることができるとしています。
愛と信頼の大切さ
「対象の内在化」という心理学の概念において、親からの愛情はずっと子の心の中に生き続けます。これは、成長した子供が自分自身を大切に感じ、社会で生きる価値を見出すための基盤となります。桝田氏は、愛情を持って子供に接し、その信頼を深めることで、ひきこもりからの回復が可能になると強調しています。
さらなる挑戦と成長
桝田氏自身もヒキコモリからの回復を果たし、心理士として活動しています。彼の経歴を通じて、精神的な成長や変化はいつでも可能であるという希望を与えてくれます。子供と親が共に歩むことで、社会で生きていく自信を育むことができる、その道筋を指し示す力強いメッセージとなっています。
この書籍は、2019年に発表された『親から始まる ひきこもり回復』の増補新装版です。ひきこもり支援の新たな視点を得るために、ぜひ手に取ってみてください。
著者と書籍情報について
桝田智彦氏は、多摩地域で成長し、音楽の道を経て心理士となった経歴を持つ方です。書籍の詳細は以下の通りです。
- - 書名: 増補新装版 親から始まる ひきこもり回復
- - 著者: 桝田智彦
- - 仕様: A5判並製・350ページ
- - ISBN: 978-4-8024-0241-5
- - 発売日: 2025年6月5日
- - 本体価格: 2,300円(税別)
- - 発行: ハート出版
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