EV電池のサーキュラーエコノミー実現に向けた協議会設立
2023年10月、日本総合研究所が新たに「EV電池スマートユース協議会」を設立しました。この協議会の目的は、EVおよびEV電池の利用における循環経済の実現です。使い捨てではなく、製品や資源を長く利用することを目指し、とりわけEV電池のサーキュラーエコノミーの推進が求められています。
設立の背景
近年、環境維持の観点から「サーキュラーエコノミー」と呼ばれる経済モデルが注目されています。このシステムでは、資源の廃棄を減らしながら、その利用を最大化する事が目指されます。特に、EV電池の循環利用は、希少な資源の海外流出を抑制する観点からも重要です。また、国内市場が2050年には約8兆円規模に成長する予測もあり、新しい市場の創出が期待されています。
しかし、現在のところ、EV電池を持つユーザーの視点から見た制度や規格が十分に整備されていません。そのため、EV電池の残りの能力を適切に評価し、リユースやリサイクルが進められていないのが現状です。こうした課題を解決するために、省庁、地方自治体、企業、学界が協力する「EV電池スマートユース協議会」が設立されました。
具体的な活動内容
本協議会では以下のような活動を行います:
規格化・標準化
国内外の関連団体と連携し、EV電池の利用を安心して行えるよう各種計測手法や制御手法の標準化を進めます。また、中古EVの利用促進策も検討し、試験支援等も行います。
評価指標の策定
ユーザーが循環利用を行う際の資源循環貢献度を測るため、CO2削減効果や製品価値の再生能力を考慮した「循環貢献指標」を策定します。この指標に基づき、計測や調査の運用方法も検討します。
CO2削減効果の測定・活用方法の検討
車両利用やリユース、リサイクルの各段階におけるCO2削減効果の算定支援、市場でのクレジット化手法の検討を行います。バリューチェーン全体でのCO2削減効果を中立的に蓄積し、再資源化における価値提供方針を考えます。
社会実装に向けた支援
ユーザー企業とEV電池に関する技術のマッチングを行い、実証プロジェクト化を図ります。さらに、循環工程各段階で発生するデータ管理方法やプラットフォーム化の検討も行います。
参画企業・団体
多数の企業や団体が協議会に参加しています。省庁からは環境省、経済産業省、福岡県が参加し、民間企業からはNTTドコモや関西電力、三井住友フィナンシャルグループなどが名を連ねています。また、大学の教授陣がアドバイザーとして協議会に協力しています。
響き合う構造で形成された「EV電池スマートユース協議会」は、今後、EV電池によるサステナブルな社会の形成に向けて重要な役割を果たすことでしょう。環境負荷の低減、資源の循環利用が促進されるという期待が寄せられています。