ビュッフェから料理セットへの新たな選択
ホスピタリティ業界において、食品廃棄物やフードロスの問題は依然として深刻です。その中でもビュッフェ形式のサービスは、環境に与える影響の観点から特に課題視されています。確かに、消費者に対して食べ放題の楽しさを提供する一方で、大量の食品廃棄が生じ、経済的にも負担がかかっています。これまで多くのホテル経営者は、顧客満足度の源泉としてビュッフェを位置づけ、提供し続けてきました。
しかし、近年のソーシャルメディアの発展、特にInstagramの影響で、顧客の評価や期待が変わりつつあります。旅行者にとって、旅行はその地を訪れることだけでなく、写真を通じて新たな体験をすることが重要視されています。このような消費者行動の変化を背景に、本研究が目指したのは、ビュッフェよりも料理セットの魅力が高まっていることを検証することです。
Instagramと食事写真の重要性
旅行先での食事は、その体験以上に美しい写真として残されることが多くなりました。そこで、ビュッフェにおける問題点を2点挙げてみましょう。第一に、ビュッフェ会場は多くの他の顧客で賑わっているため、美しい写真を撮影するのが難しいという点です。特にビュッフェの営業開始時に設けられる写真撮影タイムでは、多くの顧客が集まる中で初めて来た客だけが最適な写真を撮影できるという状況が見受けられます。
第二に、料理を自分で美しく盛り付けるのが難しいという問題もあります。混雑したビュッフェ会場で、好みに偏った料理を素早く美しく盛り付けることは実際には難易度が高いのです。
これに対して、完成された料理セットはその美しさを容易に表現でき、魅力的な写真を撮ることができます。Instagramでの投稿が生活の一部となりつつあるこの時代において、料理セット形式のサービスが新たな選択肢として浮上してきています。
研究結果とその意義
本研究では、ソーシャルメディアにおけるホテルサービスの投稿を調査し、ビュッフェ形式よりも料理セット形式のほうが高い魅力を持つことを実証しました。具体的には、日本全国の20代から60代の1,000人を対象にした調査を通じて、料理セットへの評価が最も高く、現実的なビュッフェの料理や会場は低評価であることが明らかになりました。
特に、女性やInstagramを利用する消費者は、料理セットに対して高い評価を持つ傾向がありました。これらの結果は、従来のビュッフェが持つ魅力が減少しつつあることを裏付けています。従来の常識であるビュッフェから、より魅力的で持続可能なサービスへと進化する姿が見えてきました。
フードロス削減とビジネスの新たな可能性
これまでのビュッフェ形式が持つフードロスを軽減するための研究例も存在します。しかし、それらのアプローチの効果は限られており、根本的な解決には至っていないのが現実です。そこで、新たな方向性として、ビュッフェから朝食セットなどに移行することで、環境負担やコストを削減しつつ、消費者にとって魅力的なサービスを提供できる可能性が示されています。
例えば、美しい朝食セットを提供することでホテルやレストランの満足度が向上する事例も増えています。確かに、料理の提供方法が変わることで、全体のサービスレベルが向上し、顧客の期待にも応えることができるようになります。
まとめ
本研究の結果はホスピタリティ業界に新たな考え方を提示し、顧客の期待に応えるために業界が進化していく必要があることを示しています。ビュッフェから料理セットへの移行は、環境、経済、そして顧客満足の3つの観点から「三方良し」を実現する可能性を秘めています。今後もこのトレンドが続くことが期待されます。