シリコンフォトニクス技術で新たな波長可変レーザが誕生
技術研究機関である光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、シリコンフォトニクスを用いた最先端技術を集積し、新しい波長可変レーザを開発しました。この技術によって実現されたレーザは、狭いスペクトル線幅を持ちながら幅広い波長で動作することが可能となり、光通信システムの通信能力を向上させる期待が寄せられています。
1. 高速通信に向けた背景
近年のモバイル通信技術と人工知能(AI)の進化に伴い、通信量が飛躍的に増加しています。2020年代も半ばを過ぎると、1つの光トランシーバに必要とされるデータレートは10テラビット/秒を超えることが予測されています。しかし、従来の技术だけではこの要件に応えることは難しくなってきています。そのため、異種材料を組み合わせた新しい光デバイス技術が求められています。
2. PETRAの革新的成果
異種材料集積波長可変レーザ
研究チームは、InP系の利得領域をシリコン光回路に集積することで、従来の技術では実現できなかった広範囲な波長可変に対応できる波長可変レーザを開発しました。これにより、デジタルコヒーレント伝送における信号の回路設計に革命をもたらします。
高効率の光DAC送信器
光トランシーバではデジタル信号をアナログ信号に変換するため、デジタルアナログ変換器(DAC)が不可欠です。しかし、従来のDACは消費電力が高くなる課題がありました。PETRAチームは、光電協調設計技術を用いて、この処理を光回路へオフロードすることに成功し、従来方式の約50%の消費電力での信号生成を実現しました。
シリコン光合波器
次に登場したのは、高速な光トランシーバに不可欠なキーデバイスである光合波器です。このデバイスは、シリコンフォトニクス回路を活用し、小型化かつ高集積を実現しつつ、製造プロセスにおけるバラつきを自律的に補正する技術を開発。これにより、デジタルコヒーレント光通信信号に適した高品質なフィルタを実現しました。
3. さらなる展望
PETRAは、これらの技術を基にした光トランシーバのプロトタイプを開発し、2025年度には分散コンピューティング技術を活用したデモを行うことを予定しています。さらに、これらの新技術はIOWNや多様な通信アプリケーションにも適用できる可能性を秘めています。
4. まとめ
前述の光トランシーバにおける最新技術は、単に高速通信を実現するだけではなく、低消費電力化にも寄与することが期待されています。PETRAの研究成果は、通信業界における未来の革新を象徴するものであり、今後も新たな成果が楽しみです。
本技術は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの委託業務に基づく成果です。今後の進展に注目していきましょう。