東大生起業家が提唱する介護の新たな未来
現在、日本は急速な高齢化社会に直面しています。この現状が生む課題は一見重たく感じられがちですが、そこには新たな成長のチャンスが息づいています。そんな新たな視点を持つ著者、森山穂貴氏が手がける本書『未来をつくる介護』は、介護業界の現場に立った彼の経験をもとに、新しい介護の未来を描いているのです。
介護現場のリアリティと人々の笑顔
本書の大きな特徴は、著者が実際に経験した介護現場のリアルさです。一般に、メディアは「大変な仕事」「過酷な現場」といった印象を与えますが、実際の現場には利用者の笑顔や、職員との心温まる交流が広がっています。著者は、高齢者が食事を楽しむ姿や、他の参加者と笑顔を交わす瞬間をしっかりと描写しており、介護の魅力や可能性を教えてくれます。
しかし、現場には改善が求められる側面も多々あります。著者は、職員の低い給与水準、膨大な事務作業、業界内の人間関係など、厳しい現実をも指摘しています。こうした問題をどう解決していくのか、彼は具体的な解決策を提案しています。
日本独自の高齢者コミュニティ「CCRCC」構想
著者が提唱する「CCRCC」構想は、地域を生かした新しい介護の形です。既存のコミュニティを壊さずに、高齢者が安心して暮らせる「街」を形成することが狙いです。日本独自の強みを活かしながら、介護、医療、生活支援を重ね合わせることによって、住み慣れた地域での生活を保障する、新たなモデルを生み出す方法を模索しています。
具体的には、介護サービスのM&A、新しいフィットネスコミュニティ、さらにはサブスクリプション型のごみ支援事業など、実際に実施可能なアイデアを紹介しています。これらは地域経済の活性化と高齢者の生活の質を同時に向上させることを目指しているのです。
日本の高齢社会を世界へ輸出
日本の高齢化率は2040年までに35%に達すると予測されていますが、森山氏はこれを逆手に取り、「課題先進国」から「解決策先進国」へと転換するチャンスと捉えています。世界は既に日本の介護ノウハウに注目しており、著者は介護ロボットや地域包括ケアシステムといった日本の技術・制度を国際的に展開すべきと主張しています。
本書には、介護ビジネスにおける重要な潮流や新規市場の拡大戦略も記載されています。将来的に介護業界が日本の成長エンジンとなるために必要な戦略が練り込まれています。
読者におすすめの内容
この本は、介護業界に従事する方々はもちろん、高齢者ビジネスに関心がある経営者、自治体の関係者、さらには未来の高齢社会に不安を感じている方々にとって、大変有益な一冊です。著者の独特な視点と現場体験に基づく提言は、従来の考え方を覆すものであり、読者に新たなインスピレーションを与えることでしょう。
まとめ
『未来をつくる介護』は、高齢社会における新たなビジョンと具体的な戦略を提供する一書です。著者・森山穂貴氏の経験と知識を得ることで、私たち自身の未来を考え、変えていくきっかけとなること間違いなしです。