田中貴金属工業、新たな水素透過膜を開発
田中貴金属工業株式会社は、100℃前後という低温域で高い水素透過性能を持つパラジウム水素透過膜「HPM-L111」の開発に成功したことを発表しました。この技術は、従来の金属膜とは異なり、低温での水素透過を可能にし、業界に新たな可能性をもたらすものです。
「HPM-L111」の概要
「HPM-L111」は、薄膜化されたパラジウム合金で、高純度水素の分離や精製に利用されます。従来の金属膜は高温でしか使えず、300℃以上の環境が必要だったため、コストや技術的な課題がありました。しかし、田中貴金属は特殊な表面処理技術を駆使して、100℃以下での使用が可能な膜を実現しました。サンプル提供は2026年3月5日から開始され、月100枚まで対応可能とされています。
開発の背景と課題
従来のパラジウム-銅合金である「PdCu40」は高い水素透過性能を誇りますが、運用には400℃前後の加熱が必要でした。このため、加熱設備によるコストが問題視されていました。近年、水素関連技術が進化する中で100℃以下での水素透過のニーズが急増しており、特に環境負荷を軽減する技術が求められています。
田中貴金属は、長年の研究成果を活かし、メタル膜の表面に微細な凹凸を設けることで比表面積を増加させ、水素の侵入をスムーズにする設計を実現しました。これにより、低温でも高い性能を引き出せるようになりました。
特長と用途
1. 高い水素透過性能
「HPM-L111」は、100℃前後の環境下でも高い水素透過性能を発揮します。これにより、水素センサーや燃料電池、真空装置など、多様な用途での高純度水素精製が期待されます。
2. 環境への配慮
従来必要だった300℃以上の加熱プロセスを不要とし、加熱エネルギーを削減することでカーボンニュートラルの実現に貢献します。これは、環境意識の高い現代において非常に重要な点です。
3. 精密な水素センサー
「HPM-L111」により、高精度の水素検出が可能になる見込みです。不要なガスを遮断できるため、環境を保持しつつ、更加精密なセンサー開発に寄与します。
学会発表と展示会
新たな技術の発表は、2026年3月11日から13日まで千葉工業大学で開催される日本金属学会の講演大会で行われます。また、同月17日から19日に東京ビッグサイトで行われる「H2 & FC EXPO」にて製品のパネル展示も行われる予定です。
田中貴金属工業の歩み
田中貴金属は1885年に創業し、以来、貴金属の取扱量で国内トップクラスの企業として知られています。産業用貴金属製品の製造・販売に加え、宝飾品など多岐にわたるサービスを提供し、専門家集団としての地位を確立しています。
金属膜の新たな進化は、クリーンな水素社会の構築に向けた一歩となるでしょう。本製品の成功を通じて、ますます広がる水素関連市場における田中貴金属の貢献が期待されます。