BlueMemeと九州大学が開発した先進的ゲノム解析技術
株式会社BlueMeme(本社:東京都千代田区)は、九州大学 生体防御医学研究所との共同研究を通じて、量子AIを利用した新しいゲノム解析技術「QTFPred(Quantum-based Transcription Factor Predictor)」を開発し、成果が英オックスフォード大学出版局が発行する国際学術誌「Briefings in Bioinformatics」に2025年11月に掲載されることとなりました。
研究の背景と狙い
遺伝子の機能を制御する「転写因子」は、生命現象や疾患の理解、さらには創薬に欠かせない重要な要素ですが、多くの転写因子で実験データが不十分なため、従来のAI技術では高精度な解析が難しいのが現状です。このデータ不足によって予測精度が下がることで、創薬や個別化医療の進展が阻まれることが懸念されています。
この問題を解決するべく、本研究では量子機械学習の手法を活用し、データが少ない状況下でも高い精度で遺伝子の制御を予測できる解析手法を目指しました。量子ビットの特性を用いることで、従来のAIでは捉えきれなかった複雑な情報構造を理解し、データの限界を打破する高精度な解析を実現しています。
主な研究成果
1.
高精度予測が可能な新たなAIモデルの開発
量子計算の原理を搭載し、少量の実験データでも高精度で結合パターンを予測できる「QTFPred」を開発しました。
2.
従来のAIを上回る性能が証明
ヒト細胞の公開データを使用した実験で、QTFPredはほとんどのタスクにおいて既存のAIよりも高精度な予測を達成しました。少量データでも安定した性能を発揮し、研究現場で実際に使用することができる実力を誇ります。
3.
転写因子の結合パターンの新発見
複数の転写因子が協調して結合するメカニズムを明らかにし、生命科学や創薬に新たな視点を提供しました。
国際的な評価と今後の方向性
この成果は、米国ボストンで開催される米国人類遺伝学会(ASHG 2025)でポスター発表されるなど、国内外の研究者から注目を集めています。また、「Briefings in Bioinformatics」はバイオインフォマティクス分野でのトップジャーナルの一つであり、今回の研究が世界的に高く評価されることを示しています。
今後、BlueMemeと九州大学はさらなる研究開発を進め、クロマチン解析や疾患関連のゲノム解析への応用、実機量子コンピュータでの検証を行い、創薬や個別化医療への発展を目指します。量子AIの技術を通じて、生命科学や医療分野に新たな価値をもたらすことを目指すのです。
研究者のコメント
九州大学の長﨑教授は、転写因子がDNAに結合する位置の正確な予測が遺伝子の機能や疾病理解において重要であると指摘しています。十分な実験データがない組織特異的な転写因子の課題を克服し、実用化への大きな一歩となると述べています。たった数か月間で量子機械学習の新しいアプローチを示すことができたことが、今後の発展に繋がると強調しています。
また、BlueMemeの松原研究員は、量子計算の重なりの原理が現在のAI技術の課題を解決できるとし、QTFPredの実用性を証明できたことを誇りに思っているとコメントしました。将来的には、実機の量子コンピュータを用いたより大規模で複雑な生物システムの解析が期待され、実際のゲノムデータ解析に適用して創薬や個別化医療の分野へと進展していく考えです。
まとめ
BlueMemeと九州大学の取り組みは、未来の医療やライフサイエンスの研究において今後大きな影響を与えることが期待されます。次世代のAI技術を利用し、個別化医療や創薬の進展に寄与することで、人々の健康や寿命に寄与する可能性を秘めています。