住友林業株式会社は7月23日、東京都とともに無花粉スギの生産事業化に向けた協定を締結しました。この協定に基づいて、住友林業は国立研究開発法人森林総合研究所や新潟大学が開発した無花粉スギの苗木量産技術を用いて、高効率の組織培養による無花粉スギの増殖を行ないます。これにより、従来の挿し木や種まきと比較して、高い精度での苗木生産が可能になり、花粉症対策の一環として位置づけられています。
協定の概要は、東京都から無花粉スギの球果を提供され、住友林業がそれを基に苗木の増殖技術を確立し、都内の生産事業者と協力して苗木の育成や植栽試験を行うものです。この取り組みは2027年3月31日までの期間で進められ、その後の延長も可能です。増殖した苗木は優先的に都内の事業者に販売され、年間おおよそ10万本の無花粉スギ苗木を生産する目標が立てられています。
背景には、日本国内の人工林が伐採適齢期に達している現状があります。スギやヒノキの花粉によるアレルギー疾患、つまり花粉症は、国民の約40%が影響を受けていると言われています。特に東京都では、約半数の住民が花粉症であると見込まれており、山林の管理が必要です。そのため、東京都は花粉の少ない森づくりを進めることで、木材供給の安定化を図ると同時に、林業の活性化を目指しています。
住友林業は、花粉症発生源対策の一環として無花粉スギの生産に寄与する意義を見出し、東京都の無花粉スギ生産事業化に協力することになりました。同社は「Mission TREEING 2030」という長期ビジョンを掲げ、森林のCO2吸収量を増やしながら、持続可能な形での木材利用を推進しています。今回の協定により、花粉症の問題を解決するための新たなステージが切り拓かれることになります。
今後の展開として、住友林業は東京都が研究してきた無花粉スギの遺伝子資源を受け取り、その増殖や育成手法を確立していく予定です。2026年春には試験的な植栽も行われ、無花粉であるかどうかなどの検証が行われる見込みです。最終的には目標の年間10万本以上の苗木を生産し、2030年ごろには本格的な事業化を目指します。
こちらの取り組みは、住友林業が全国に展開している育苗センターのネットワークをも活かし、年間190万本の苗木生産に寄与することが期待されています。これにより、森林を持続可能に管理し、次世代に残すための施策が進むことでしょう。また、住友林業が持つ組織培養技術を駆使し、未来の木材生産に新たな道を切り開くことにも繋がります。この取り組みが実を結び、花粉症の悩みを軽減する新たな環境が整えられることを期待しています。