高額消費者の購買行動に関する調査
近年、日本での高額消費者の購買動向に関する興味深い調査結果が発表されました。この調査を実施したのは、経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(BCG)です。対象は、年収3,000万円以上、かつ年間消費額が1,000万円を超える約300人の消費者で、その結果は非常に興味深いものです。
物価高にも関わらず消費行動を変えない
調査によると、一般消費者の80%が物価高によって消費行動を控えめにしていると答える中で、なんと高額消費者の中でそのように答えたのは20%のみでした。つまり、高額消費者は物価の上昇に影響されにくいということが判明しました。さらに、「価格が高くても価値があれば購入する」と答えたのは一般消費者20%に対し、高額消費者はなんと80%に達しています。このデータからも、高額消費者は自己の価値観を重視していることが伺えます。
エンタメや体験に重きを置く消費
また、外部データ分析によれば、年間1,000万円以上を消費する高額消費者は、一般層に比べてエンタメや旅行、趣味の分野での出費が約9倍に達することが明らかになりました。高額消費者は「モノ」だけでなく「体験」に対しても非常に高い価値を見出しているようです。
ブランドへの信頼と継続
高額消費者のもう一つの特徴は、品牌に対する忠誠心です。調査結果では、ブランド品購入時の60%超が「同じブランドを継続して選ぶ」という意向が示され、新たな店舗を試す割合はわずか5%でした。つまり、新しいブランドへのハードルは非常に高く設定されているということです。
消費行動を左右する価値観
調査では、消費額やブランドの意向、新規ブランド試行意向を男性・女性、年代、年収などさまざまな要因で分析しました。結果、消費行動を明確に分ける要素は年代や年収ではなく、消費者の価値観であることが示されました。「今を楽しむ」「旅行や娯楽に惜しみなくお金を使う」といった価値観が、消費行動を強く影響しているのです。
マーケティングの再構築が必要
この調査を担当したBCGアソシエイト・ディレクターの中野佑香氏は、高額消費者は「価格よりも選ぶ意味が納得できること」や「所有の自己物語化」が重視されると述べています。そのため、企業が選ばれるためには、「物語化」という概念が重要です。消費者が心に残る特別な体験が、次回の購買行動を促す鍵になるのです。
企業は新たな顧客の創出やブランド形成に向け以下の三つの取り組みを強化するべきです。
1.
ターゲティングの再構築: 属性に基づくのではなく、価値観や行動傾向に基づいたターゲット分類を行う。
2.
物語のナビゲーターを育成: ブランドの価値を個々の物語に再構成する人材を育て、選ばれる理由を創出。
3.
包括的な顧客理解: 自社データだけでなく、外部データやAIを活用し、将来のVIP顧客を予測し関係性を育む。
結論
日本における高額消費者の動向は、物価上昇とは裏腹に、自分にとっての価値を重視した購買行動が一貫していることが分かります。この調査結果を踏まえ、企業は従来のマーケティング手法を見直し、より消費者の価値観に寄り添ったアプローチを強化していく必要があるでしょう。