長きにわたる支持を受ける『最後のトリック』
深水黎一郎の著作『最後のトリック』が、2025年5月に重版を果たし、その発行部数が33万部を突破したことが発表されました。この作品が10年間もの間、多くの読者に支持され続ける理由を探ります。
ミステリーの新たな挑戦
『最後のトリック』は、深水氏のデビュー作であり、初めは『ウルチモ・トルッコ』というタイトルで登場しました。2007年にメフィスト賞を受賞し、その後2014年に改題して河出文庫から発行されました。作品のテーマは「読者が犯人」という斬新なもので、これまで多くの作家たちが挑戦してきたものの、実現した者はいなかったのです。
この作品に対する評価は高く、「最高峰の到達点」と称する識者も少なくありません。発売からすぐに多くの読者を魅了し、その年を代表するベストセラーとして迎えられることとなりました。
話題を呼んだビブリオバトル
特に注目されたのは、2018年に開催された全国高等学校ビブリオバトルです。この大会で当時の高校生、遠藤駿介さんが『最後のトリック』を取り上げ、冒頭で「皆さん、今までに人を殺したことはありますか?」といったユーモラスな問いかけをし、聴衆の心を掴んで見事優勝を果たしました。このスピーチは、若者たちに大きな影響を与え、本書がさらに広く読まれるきっかけとなりました。
深水黎一郎に聞く
最近の重版に際し、深水氏にインタビューを行いました。彼はこのように語ります。「普段あまり本を読まない人が手に取ってくれることが多く、非常に嬉しいです。もし本書が読書の世界への入り口となるのなら、本当に幸せです。」
また、深水氏は、読者が犯人というテーマに挑んだ動機についても触れました。「小学校の頃に読んだミステリー入門書に、『最後の意外な犯人は読者だ』という内容があり、それを実現させるのが長年の夢でした。」
長寿命の理由
驚くべきは、この作品が10代から20代の読者に特に人気を持ち続けている点です。CANTERAデータによると、他のミステリー作品と比べると占有率が10%も高いと言います。これは、作品の独自性が若者に受け入れられている証左の一つといえるでしょう。
10年という長期の支持期間を迎え、重版の勢いを増す『最後のトリック』。ミステリーファンだけでなく、幅広い世代に再び注目されることを受けて、日本の推理小説界のレジェンド、島田荘司氏も「まれに見る野心作であり傑作」と評しています。
深水氏の作品は、単なる小説ではなく、読者の心を揺さぶる挑戦状であり続けます。あなたもぜひこの機会に、彼のデビュー作を手に取ってみてはいかがでしょうか。
書誌情報
- - 書名:最後のトリック
- - 著者:深水黎一郎
- - 文庫版解説:島田荘司
- - 発売日:2014年10月7日
- - 最新重版出来日:2025年5月7日
- - 税込定価:803円(本体730円)
- - ISBN:978-4-309-41318-1
- - URL:最後のトリック
深水黎一郎略歴
1963年山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2014年には『最後のトリック』を刊行し、大ヒットを記録。さらには2011年に日本推理作家協会賞も受賞しています。