介護業界への影響深刻化、報酬改定と人材不足の実態
一般社団法人全国コープ福祉事業連帯機構(コープ福祉機構)が実施した緊急アンケートによると、2024年4月と5月の訪問介護事業の報酬改定が事業に与えた影響は深刻なものであることが報告されました。調査では、全国の14の社員法人が対象となり、2023年の同時期と比較した実績が示されています。
事業収入の減少
14社員法人の合計事業収入は、前年同月比で1.3%減少し、約1,300万円にまで落ち込みました。特に、14法人中8法人で収入が悪化し、事業利益も問題です。昨年の31,198千円から赤字に転落し、今年は-9,552千円となっており、トータルで約4,075万円の減益を記録しました。
この結果は、介護職員の人材不足に直結していると考えられ、報酬引き下げがサービス提供に影響を与えていることも明らかになっています。
ヘルパー不足の現実
特に直行直帰型のヘルパーにおいては前年に比べ162人(-7.2%)の減少が見られ、サービス提供回数にも減少が顕著です。これは、未曽有の人材不足によるものです。多くの法人がこの影響に悩まされ、訪問介護現場の維持が困難になっています。
基本報酬引下げの影響
アンケートの自由記述には、基本報酬の引下げが事業運営に及ぼす影響を懸念する声が多く寄せられていました。「収入はマイナスになると思われる」「訪問介護員のモチベーションが低下している」などの意見がその典型です。また、ヘルパーやサービス提供責任者の高齢化が進み、将来的な事業運営への不安も際立っています。
法人の中には「このままでは訪問介護事業の縮小を考えざるを得ない」と、別のサービスへの転換も視野に入れ始めています。
人材紹介会社の利用
さらに、介護業界全体で人材不足が続く中、14社員中11法人が人材紹介会社に依存せざるを得ない状況に追い込まれています。これによって、紹介会社への手数料が年間約20〜30%に達する場合もあり、人的資源を確保するための経済的負担が大きくのしかかります。このコストまで含めて、法人の利益を圧迫しています。
例えば、看護師の紹介手数料は年収の20〜25%、ケアマネジャーは30%と、高額の負担が発生します。
調査概要と今後の展望
今回の調査は2024年7月1日から15日の間に、14社員127訪問介護事業所に対してWeb調査を行い、その実施結果がまとめられました。福祉事業のビジョンとしては、国内の誰もが安心して暮らせる地域作りに貢献することが掲げられていますが、実際にはその実現が危うくなっているのが現状です。
今後の福祉事業にとって、報酬引き下げと人材不足は克服しなければならない大きな課題であり、急務となっています。