青果物流通効率化の新たな取り組み
最近、青果物の流通における効率化が進んでいます。公益財団法人流通経済研究所と一般社団法人スマートフードチェーン推進機構が主導し、都築電気株式会社と株式会社セラクがナビゲート役として参加したプロジェクトは、農業協同組合(JA)と青果卸売市場のシステム間でのデータ連携を実現しました。この取り組みにより、市場での入荷作業時間がなんと82%も削減される結果を生み出したのです。
背景:流通の現状と課題
日本国内で販売される国産青果物の76.4%は卸売市場を通じて流通しています。この大部分がJAから出荷されており、したがってJAと市場の連携は極めて重要です。ただし、従来の流通システムでは、JAが集荷した青果物を検品し、販売先に振り分ける際に手書きの紙伝票を用いていました。この伝票はFAXで伝わり、市場側では再入力が必要で、情報精度にも課題がありました。これにより、作業は多くの労力を要し、効率が悪化していました。
デジタルシステムの導入と連携
今回実施されたデータ連携プロジェクトでは、「みどりクラウドらくらく出荷」と「KitFitマルシェ」というふたつの情報システムが統合されました。
- - みどりクラウドらくらく出荷は、農業者や出荷団体の計数や伝票発行作業をデジタル化し、負担を軽減することに特化したシステムです。
- - KitFitマルシェは、都築電気が開発した青果市場向けの基幹システムで、青果卸売業様のために特化した多機能を有しています。
この両者が連携し、JAの出荷情報をスムーズに市場の基幹システムへと取り込むことに成功しました。これにより、FAXで受信した紙伝票を再入力する手間が省かれ、データ取り込みだけで入荷処理が可能になりました。
実証結果の影響
この改良によって、青果物の入荷作業にかかる時間が82%も削減されただけでなく、作業効率も飛躍的に向上しました。今後は、全国のJAと市場にこの実証成果を広めることが目指されています。
参加者のコメント
この取り組みに関与している各企業からは、次のようなコメントが寄せられています。流通経済研究所の折笠俊輔氏は、出荷伝票の電子化がデータ入力の負荷を大幅に削減した点を強調しました。また、都築電気株式会社の青木謙介氏は、青果物DX推進の重要なステップだと述べています。セラクの持田宏平氏も、デジタル化の恩恵が青果物の流通全体に波及すると期待を寄せています。
スマートフードチェーンプラットフォームukabis
今回の連携によって築かれた「ukabis」は、スマートフードシステムを支える情報基盤として機能し、今後も農業・物流・地域のつながりを強化することが期待されています。このプラットフォームは、農業から流通、販売、資源循環まで幅広いデータの共有を可能にします。
まとめ
青果物流通のデジタル化は、今後ますます重要になってくるでしょう。効率化が進むことで、農業生産者だけでなく、消費者にもメリットがもたらされることが期待されます。この新たな取り組みが日本の食文化や流通システムにどのような変化をもたらすのか、今後の動向に注目です。