富士通と大阪大学が描く未来の量子計算
富士通株式会社と大阪大学の量子情報・量子生命研究センターは、最新の量子コンピュータ技術を用いて、化学材料のエネルギー計算の新技術を開発しました。この新技術により、従来のコンピュータで計算が不可能であった触媒分子のエネルギーを量子コンピュータを利用して現実的な時間内に計算することができる見通しがつきました。
量子コンピュータの現状
近年、量子コンピュータは創薬や金融など、幅広い産業分野での利用が期待されていますが、エラーの発生がその実用化の障害となっています。量子ビットを増やすことでエラーを防ぎ、正確な計算を行うためには、大規模な量子コンピュータが必要です。
これまで富士通と大阪大学は、量子計算技術の研究開発において、「STARアーキテクチャ」という独自のアーキテクチャを発表。最近ではその改良版である「STARアーキテクチャ」ver. 3を開発し、量子計算精度を劇的に向上させました。
新技術の内容
新技術は主に二つの要素から成り立っています。「STARアーキテクチャ」ver. 3では、位相回転ゲートを導入することで量子ビット数や計算時間を大幅に削減。さらに、計算精度を従来の10倍以上に向上させることに成功しました。
もう一つの技術は分子モデルの最適化です。この技術により、計算資源を効率的に使用できるようになり、エネルギー計算に必要な量子ビット数を大幅に減少させました。特に、医薬品開発や新素材の探索、環境問題に対する革新的なソリューションを提供することが期待されています。
技術の応用
開発した技術を用いて、酸化酵素であるシトクロムP450やアンモニア合成に関与する鉄-硫黄クラスター、合成化学でのルテニウム触媒のような重要な分子のエネルギー計算を行いました。その結果、必要な量子ビット数が従来の1/15から1/80に減少し、計算時間も3桁短縮されることが確認されました。
この技術は、創薬や新素材開発、金融業界への応用が見込まれ、社会課題の解決に向けた重要なステップとなります。
未来への展望
今後、富士通と大阪大学はこの「STARアーキテクチャ」と分子モデル最適化技術をさらに発展させ、量子コンピュータの実用化を進めていく計画です。特に、高温超伝導やカーボンリサイクルといった分野への応用に向けた研究が進むことで、多くの業界に革新をもたらすことが期待されています。
教育や研究機関、産業界との連携を強化し、量子計算の発展がもたらす未来を築いていくことが、両者の目標となります。国立研究開発法人科学技術振興機構などからも支援を受け、あらゆる可能性に挑戦していく姿勢を示しています。