年収103万円の壁がもたらす働き控えの実態と課題を探る
最近、よく聞かれる「年収の壁」は、特に親や配偶者の扶養に入る人や、パートタイムやアルバイトで働く方々にとって、大きな関心事です。エフアンドエムネット株式会社が管理部門向けのビジネスメディア「労務SEARCH」による調査で、年収103万円以下の300名の男女を対象に働き控えや年収壁に関する実態が明らかになりました。
年収の壁とは何か?
年収の壁は、税金や社会保険料が発生するボーダーラインであり、103万円を超えると、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなるため、多くの人が104万円を目安に働く時間や日数を制限しています。この壁を超えないために労働時間を調整することは、もはや常識とも言える現状です。
国会では、年収の壁を178万円まで引き上げる提案もされており、この動向に多くの人々が注目しています。
調査内容と結果
今回の調査では、300名の回答者に対して生活の実態を掘り下げた質問が行われました。その結果、74.7%の人が年収103万円を超えないように働き控えをした経験があると答えました。
困った経験とは?
年収の壁によって困ったことがあるかの質問に対して、60.0%の人が「ある」と回答。この具体的な問題の中で最も多かったのは、「もっと働きたいのに働けない」という場合で、41.1%がこの悩みを抱えているとしました。次に多いのは「収入が足りない」が23.9%、さらには「就業時間や収入の管理・調整が難しい」が19.5%という結果となりました。
このことから、年収の壁がもたらす影響は、単なる経済的な面のみならず、働く意欲や職業 satisfactionにも非常に大きな影響を与えていることがわかります。
年収の壁・支援強化パッケージの認知度
2023年10月から施行された「年収の壁・支援強化パッケージ」について、驚くべきことにマイナス認知度が高く、68.7%の人がこの制度を知らない、または意味が理解できていないと回答しました。95.3%の人がこの制度を利用しておらず、利用したいと答えたのは約60%となっています。これが意味するのは、働き手に対しての施策が充分に届けられていないという現状です。
引き上げに対する意見
年収の壁の引き上げに賛成か否かの質問に対して、45.0%が賛成、32.7%がどちらかといえば賛成という回答が寄せられ、78%が引き上げに対して前向きな姿勢を示しています。ただし、反対意見に立つ人々は、社会保険料が発生すると手取りが減るかもしれないといった懸念を抱いていることが分かりました。
まとめ
調査結果から、年収の壁は多くの労働者にとって「もっと働きたいのに働けない」という悩みを生んでおり、年収の壁・支援強化パッケージについての認知度は非常に低いことがわかりました。もし年収の壁が引き上げられれば、約8割の人が「もっと働きたい」と考えていますが、その実現には制度の周知徹底や、働く人々のニーズに即した施策が求められます。
労務SEARCHは今後も、こうした調査を通じて管理部門の課題解決に向けた情報を発信し続けていく所存です。
調査概要
実施日:2024年11月15日~2024年11月25日 対象:年収103万円以下の男女300名