新たなEGFR遺伝子変異陽性肺癌治療法の登場
近年の医療研究の進展により、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)治療に革命がもたらされています。新たに承認された療法として、J&Jのラズクルーズ®(一般名:ラゼルチニブメシル酸塩水和物)とライブリバント®(アミバンタマブ)の併用療法が登場しました。この治療法は、従来のオシメルチニブと比較して、全生存期間の延長をもたらすことを示しています。
新たな治療法の承認
2025年3月の時点で、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行または再発したNSCLCの新たな一次治療として、ラズクルーズ80mg及び240mgが薬価収載され、ライブリバントとの併用療法が合法的に導入されました。この併用療法は、効能としてEGFR及びMETを標的にした治療であり、通常の抗がん剤を用いない多標的なアプローチを採用しています。これは、治療選択肢が限られた患者にとって非常に重要な進展です。
MARIPOSA試験の意義
国際共同第III相MARIPOSA試験において、この併用療法がオシメルチニブに比べて生存期間的な優位性を示したことが注目されています。具体的には、追跡期間中央値37.8ヵ月で、生存期間中央値が未到達であり、少なくとも12ヵ月以上の延長が期待されています。この結果は、従来の治療法に対する大きな可能性を示唆しており、EGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者にとっての希望です。
EGFR遺伝子変異陽性肺癌の現状
肺癌は全世界で最も致死率の高い癌の一つであり、その中でもNSCLC(非小細胞肺癌)が大部分を占めます。日本国内でも、約35%の肺腺がん患者がEGFR遺伝子変異を有するとされており、今後の治療戦略はますます重要になっています。現在の標準治療であるTKI単剤療法の5年生存率は20%未満であり、多くの患者が治療選択肢に乏しい現状が続いています。
新たな希望としての併用療法
ライブリバントとラズクルーズの併用療法は、これまでの治療法に比べて新しい選択肢を提供すると期待されています。特に、免疫細胞を介した作用を持つライブリバントが、悪性細胞に対する攻撃を強化することで、ODH(Overall Survival Hazard)を改善する可能性があります。治療の安全性についても、これまでのデータに基づき、安全性プロファイルは一貫しており、静脈血栓塞栓症のリスクが考慮されています。
専門家の見解
近畿大学の林秀敏教授は、この新しい治療法が多くの進行・再発のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に希望をもたらすと話しています。また、J&Jの代表取締役社長關口修平氏も、患者に対するベネフィットを強調し、非小細胞肺がん治療の新たな段階へ移行することを確信しています。
この治療法の臨床現場における普及によって、これからの肺癌治療の未来が変わる可能性があります。新しい希望を手にする患者たちにとって、ラズクルーズとライブリバントの併用療法は、希望に満ちた新たな道となるでしょう。