国連大学が警告、重要鉱物採掘による水不足と環境の危機
国連大学が最近発表した報告書によれば、電気自動車や再生可能エネルギー、デジタル技術の発展が進む中、リチウムやコバルトなどの重要鉱物の需要が急増しています。しかし、その一方で鉱物採掘が引き起こす水不足や環境汚染、深刻な健康問題についての懸念も高まっています。この報告書『Critical Minerals, Water Insecurity and Injustice(重要鉱物、水不安、そして不正義)』は、採掘による影響が主に脆弱な地域に不均衡に及んでいる実態を明らかにしました。
エネルギー転換やデジタル化の必要性はますます高まっているものの、その恩恵は先進国に集中し、貧困層や先住民といった弱者にはつらい現実が強いられています。例えば、2024年に生産が見込まれるリチウムの量は約24万トンですが、この生産に必要な水量は実に4,560億リットルとなり、これはサハラ以南のアフリカで約6,200万人が1年間に必要とする生活用水に相当します。このような水の消費が続くと、採掘地域の水不足はさらに深刻化することが懸念されています。
特にチリのサラール・デ・アタカマでは、リチウム採掘によって地域の水使用量の65%が消費され、地下水位の大幅な低下が確認されています。さらに、重要鉱物の埋蔵地域は世界中の水不足地域に偏っており、その16%がすでに水の利用が供給を上回っているエリアに存在しています。エネルギー転換に必要な鉱物の54%は先住民の土地に埋蔵されており、採掘による影響を受けるのは、彼らの生活にとって重大な問題です。
健康面でも深刻な影響が出ています。コンゴ民主共和国では、鉱山近隣に住む住民の72%が皮膚疾患を抱え、女性や少女の半数以上が婦人科系の健康問題を抱えているとされています。さらには、新生児の先天異常の発生率も高く、鉱山周辺のコミュニティにおいては労働環境が著しく劣悪な状態であることが分かっています。特に、子どもが鉱山で働かされるケースも多く、約30%では十分な安全対策が講じられず、彼らの未来に暗い影を落としています。
今後、パリ協定の目標達成にはリチウムの需要が2040年までに9倍、コバルトとニッケルはそれぞれ2倍に達するとされています。国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)の所長であるカーヴェ・マダーニ教授は、「環境負荷を特定の地域やコミュニティに移すだけでは、持続可能かつ公正なエネルギー転換にはならない」と強調しています。
このような中、報告書では重要鉱物に関する国際ガバナンスの改革が必要と提言しています。具体的には、法的拘束力のある国際的なデューデリジェンス基準の導入、汚染と水管理の厳格化、電池や電子機器のリサイクル強化、地域社会への公正な利益分配と先住民の同意の確保が挙げられています。
報告書の筆頭著者であるアブラハム・ヌンボグ博士は、「ガバナンスの欠如を放置すれば、クリーンエネルギーの未来も過去の化石燃料経済と同じ不正義の上に築かれることになる」と警鐘を鳴らしています。
この重要な報告書は以下のリンクからダウンロードできます。
ダウンロードはこちら
また、本プレスリリースの原文(英語)は
こちらからご覧いただけます。
国連大学について
国連大学は、人類の生存や開発、福祉に寄与するために、地球規模の課題に取り組む研究機関です。東京・渋谷に本部を構え、日本に唯一の国連機関として活動しています。13の研究所が国連大学に所属し、教育と研究を通じてその使命を遂行しています。
UNU-INWEHについて
国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)は、カナダに拠点を持ち、水や環境、健康に関連する重要な課題に取り組む国連の研究機関の一つです。