植物ホルモン・ジャスモン酸の新たな可能性
明治大学の研究結果により、植物ホルモン「ジャスモン酸」がマウスの精神的ストレスを軽減することが確認されました。この発見は、従来考えられていた植物ホルモンの役割を超え、動物の行動に影響を与える新たなメカニズムの解明に繋がります。
研究の背景
ジャスモン酸は、植物が昆虫の攻撃や病気のストレスに応えるために生成する物質です。これまで多くの研究では、植物ホルモンは主に植物の成長や防御反応に関するものであり、動物に対する効果はほとんど検討されていませんでした。しかし、この研究ではジャスモン酸が動物に対しても重要な生理的役割を果たす可能性が示唆されました。
研究の成果
金子准教授らは、マウスを用いてジャスモン酸の抗不安作用を調査しました。具体的には、ジャスモン酸をマウスに腹腔内投与し、いくつかの行動試験を通してその効果を確認しました。高架式十字迷路試験では、オープンアームでの滞在時間が増加し、ジャスモン酸が抗不安様作用を持つことが確認されました。
さらに、オープンフィールド試験や新奇環境摂食抑制試験でも同様の結果が得られ、ジャスモン酸はマウスの不安を低減する重要な働きを持つことが明らかになりました。これはジャスモン酸が動物の行動にも変化をもたらすことを示す重要な成果です。
メカニズムの解明
また、ジャスモン酸の抗不安作用に関与する中枢神経系のメカニズムを調査した結果、セロトニンおよびドーパミン系が関与していることが分かりました。これは、精神的なストレスに対する応答に植物ホルモンが寄与し得ることを示す重要な知見です。
今後の展望
この研究成果は、植物ホルモンに基づく新しい抗不安薬の開発の可能性を示唆しています。また、食育に繋げることで、植物を利用した新たなアプローチが期待されます。具体的には、野菜を調理する過程で植物ホルモンが生成されることを利用しましょう。この研究は、植物性食品の持つ健康機能の解明と新しい機能性食品の開発にも貢献することを目指しています。
本研究は、Springer Nature社の『Scientific Reports』に掲載され、国際的な注目を集めています。研究チームは今後の展開として、植物ホルモンを活用した新たな医療や教育の形を模索し続けています。試験を通じて得られた知見は、今後の心理的健康対策や、植物を通じた健康促進へと繋がるかもしれません。