葉真中顕の『家族』が直木賞候補に選出
2025年10月24日、株式会社文藝春秋から刊行された葉真中顕(はまなか・あき)さんの新作小説『家族』が、第174回直木三十五賞の候補作に選ばれました。葉真中さんは、介護現場での衝撃的な殺人事件をテーマにした『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、2013年に作家デビューしました。以降、『絶叫』『鼓動』など、現代社会の抱える様々な歪みをテーマにした作品を発表し、それぞれが話題を呼びました。今回の『家族』は、彼の初めての直木賞ノミネート作となります。
事件を題材にした深い物語
『家族』の物語は、2011年11月3日に実際にあった事件に基づいています。裸の女性が交番に駆け込み、そこで発覚したのは、長年にわたり監禁されていた奥平美乃という女性の悲劇的な状況でした。彼女は以前、妹夫婦に関して相談をしていたものの、警察はその情報を掘り下げることはありませんでした。この事件の背後にいる「おかしな女」こと夜戸瑠璃子(やべ・るりこ)は、擬似家族を作り上げ、暴力を振るっていたのです。彼女の周辺では、13人もの変死が発生していました。
この作品は、再び明らかになった日本の「民事不介入」制度の欠陥を鋭く突いています。瑠璃子にとっての「家族」とは何なのか、そして「愛」の本質とは何なのか、深い問いかけを通じて読者に考えさせる作品となっています。
葉真中顕さんの考え方
葉真中さんは『家族』について、自らの言葉で多くを語っています。「小説の面白さが現実の面白さに依存してしまうのであれば、小説を書く意味がない。私にとってこの作品を書くことは、小説本来の重要性を問うプロセスでした。」と述べています。彼は小説を書きながら、どのようにしたら読者に小説ならではの景色を提供できるのか、常に問いているのです。
書店員からの反響
『家族』に対する書店員の声も大きな反響を呼んでいます。「怖くて読みたくないが、それでも読み続けたくなる」という意見が寄せられ、その作品の持つ吸引力が伺えます。これからの販売促進や口コミで広がっていくことで、さらなる注目を集めることが確実視されます。
著者プロフィール
葉真中顕さんは、1976年に東京都で生まれました。2013年には『ロスト・ケア』でデビューし、その後も数々の賞を受賞しています。彼の作品は全て、現代社会のさまざまな側面を鋭く捉え、多くの読者を魅了しています。
最後に
第174回直木賞の選考会は2026年1月14日に東京で行われる予定です。果たして葉真中さんが受賞するのか、注目が集まります。『家族』が書店の棚に並ぶ日を、ぜひ楽しみにしてください。試し読みも可能で、皆さんの感想をお待ちしています。