住友林業、ロンドンに環境配慮型オフィスを完成
住友林業株式会社は、英国ロンドンにある新たな木造6階建てオフィスビルが完成したことを発表しました。このプロジェクトは、住友林業と英不動産開発会社Bywater Propertiesとの合弁で開発されたもので、環境に配慮したユニークな特性を持つ建物です。5月8日には竣工セレモニーも執り行われ、多くの関係者が新たなオフィスの完成を祝いました。
環境配慮型設計
この新しいオフィスビルは、特にCO2排出量削減を強く意識して設計されています。「One Click LCA」というソフトウェアで試算したところ、資材の製造や運搬、施工、修繕、解体を含む各工程におけるCO2排出量を極限まで抑えることができました。特に修繕や解体を除く初期段階でのCO2排出量は、面積1㎡あたり413㎏CO2eにまで削減されており、ロンドン全域でのオフィス新設時の基準と比較して約60%の削減を達成しています。
定量的評価
このオフィスビルの設計は単に環境に優しいだけでなく、高い性能を誇ります。例えば、エネルギー効率を示すEPCレートにおいては最高評価のAを獲得しています。また、スマートビルディングのお墨付きを示す「WIRED SCORE」でもプラチナを取得しており、さらなる環境認証である「BREEAM」はExcellent、健康に配慮したオフィス認証の「WELL」もGold取得を見込んでいます。
サーキュラーエコノミーへの貢献
このプロジェクトにおいては、木材の約80%を解体後に再利用可能な設計としており、これによりCO2を長期的に固定し資源の循環を図ることができます。こうして形成された循環型モデルは、環境への負担を減らし、持続可能な社会の実現に寄与します。
背景:環境への意識と政府の方針
現在、世界の建設セクターはCO2排出量の37%を占めており、その排出量の削減が急務であるとされています。英国政府は、2050年までに温室効果ガス排出をカーボンニュートラルにする目標を掲げており、オペレーショナルカーボン削減が要求されています。Fレベル未満のEPC評価の建物の賃貸は禁止されるなど、環境性能の高いオフィスへの需要が高まっている一方、ロンドンでの実際のBレベル以上のオフィス物件は約2割に過ぎず、今後のサステナブルなオフィスの必要性が増しています。
物件の特徴と所要設備
このオフィスビルは、内部に現し仕上げの構造材が活用されていて、自然な木の温もりを感じることができます。また、豊かな緑の公園と隣接しており、約100台分の駐輪場やシャワールームを完備しており、従業員にとって非常に快適な職場環境となっています。
独自のデザイン
さらに、木造建築という特徴から、周辺環境に溶け込むようなバイオフィリックデザインを取り入れた設計で、自然との調和が求められる現代に最適なものであることが伺えます。
エリアの特性
オフィスビルの立地するエリアは、ロンドンの再開発が進むテムズ川南岸であり、この周辺では新しいオフィスビルや住宅、リテールなどの建設が活発です。国際企業のオフィスが多く点在し、アクセスの良さも際立っています。
セレモニーの模様
竣工セレモニーには約70名の関係者が参加し、盛大なテープカットが行われました。関係者からの祝辞も交え、木造、環境に配慮したオフィスへの関心が高まっていることが印象的でした。
住友林業のビジョン
住友林業グループは、「Mission TREEING 2030」という長期ビジョンを掲げ、森林管理から木材の生産・流通、さらには不動産開発に至るまで幅広い分野で事業を展開しています。これにより、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及を通じて長期的な炭素固定を実現しようとしています。このような取り組みを通じて、脱炭素社会への寄与を目指し、今後も英国市場での取り組みを進化させていきます。