金属酵素で人工細胞制御
2024-12-24 10:09:19

人工細胞の運命を金属酵素で制御する技術の革新

研究の背景と目的



近年、人工細胞の開発が注目されていますが、これまでの研究は単一の機能に焦点を当てることが一般的でした。しかし、実際の細胞は多様な機能を持ち、環境に応じて適応的に反応します。そこで、様々な機能を持つ人工細胞の開発に取り組むことが求められています。

岐阜大学高等研究院の東小百合特任助教とミュンスター大学の株式会社Seraphine V. Wegner教授のチームは、人工細胞の運命を制御できる新しい技術を確立しました。本研究の主な成果は、特定の金属イオンの存在によって異なる機能を持つ人工細胞を構築することができるというものです。

研究手法



本研究では、巨大リポソーム(GUV)を使用して金属酵素の活性を制御しました。リポソームとは、細胞膜のモデルとして用いられ、内部にさまざまな物質を封入できます。研究チームは、特定の金属イオンを透過させるイオノフォアという分子をリポソームの膜に結合させ、多様な金属依存性酵素を内部に内包することで、金属イオンによって活性化されることを目指しました。

その結果、内包された3種類の金属酵素がそれぞれ異なる金属イオン(Ni2+、Cu2+、Ca2+)と結合することが証明されました。このイオノフォアによる金属イオンの輸送により、人工細胞内での酵素の活性を調整することが初めて実現されたのです。

研究の成果



3種類の金属酵素を同時に内包することで、各金属酵素は外部の金属イオンの存在に応じて活性化されます。イオノフォアによって選択的に金属イオンを細胞内に取り込むことができ、その結果、人工細胞は異なる反応を示すことが確認されました。さらに、興味深いことに、細胞膜に結合するイオノフォアの順序がその後の酵素の活性化に影響を与えることが明らかになりました。最初に活性化された酵素がその後の反応を支配し、他の経路の活性化を抑制する仕組みが実証されたのです。

これにより、人工細胞の適応性を高め、さまざまな機能を持つ次世代の人工細胞の設計に向けた重要なステップとなりました。この技術が実用化されることで、バイオ材料の新たな応用や細胞に似た機能を持つシステムの開発が期待されています。

今後の展望



開発した人工細胞は、異なる機能を持つ金属酵素を活性化する手段として新しい可能性を示しています。特に、外部刺激が内部機構にどのように影響を与えるかを理解することが、さらなる研究の鍵とされています。この技術は、細胞分化や特定機能の発現メカニズムを模倣した「多能性人工細胞」の設計においても、新たな指針を提供するでしょう。

【研究内容は、2024年12月23日にNature Chemistry誌にて発表されました。】


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