自己責任論が議論の中心に？稲葉陽二先生の見解を解説

近年、日本社会において「自己責任」という言葉が頻繁に使われるようになってきました。この概念は、個人の選択と行動の結果は本人が負うべきであるとの考え方です。しかし、この自己責任論には多くの問題が指摘されています。特に、若年層の貧困や高齢者の社会保障に関しては、単なる自己責任として片付けられるわけではありません。

Polimill株式会社が運営する意見投票プラットフォーム「Surfvote」において、稲葉陽二先生はイシュー「生きることは『自己責任』か？」についてコメントを発表しました。このコメントは、日本の社会における自己責任論の限界を考えるための貴重な視点を提供しています。

1. イシューの背景

まず、日本では福祉制度などが「自己責任」を前提に成り立っているとされています。この背景には、個人が努力して生きることが求められるといった厳しい現実があります。しかし、実際には、「親ガチャ」と呼ばれる不平等や、自然災害、社会の不条理が個々の状況に多大な影響を及ぼしています。

稲葉先生は、これらの現実を踏まえた上での自己責任論に対して疑問を呈しています。例えば、若年層の貧困を自己責任で片付けたり、高齢者を一律に自己責任として切り捨てることは、果たして適切なのかと考えています。自己責任がすべての場合に適用されるのは極めて限定的であるとの見解を示しました。

2. 自己責任と高齢者の問題

年齢を重ねるにつれて「自己責任」の部分は増えるとされていますが、高齢者になると、申請を行う能力が失われることが多いです。つまり、自己責任を問うことが不適切になる場合もあるわけです。特に、高齢者の社会保障は、単なる責任問題として考えるべきではないとのスタンスを示しました。

3. ゼロ次予防の考え方

稲葉先生はさらに、孤立や孤独の問題についても言及しています。彼は、健康問題を予防するための「ゼロ次予防」に注目しており、この考え方は星旦二先生の提唱によるものです。ゼロ次予防とは、社会の仕組みそのものを変えることで、人々の孤立や孤独を防ぐことを目的としたアプローチです。

先生は、ゼロ次予防の意識を持たなければ、本質的な問題解決にはつながらないのではないかと指摘しています。「生きることは自己責任」という考え方は、現実の人々の人間関係を無視したものであるとの主張です。

4. まとめ

稲葉陽二先生の見解は、現代日本における「自己責任」論が抱えるさまざまな問題を浮き彫りにしています。個人の努力を重んじる一方で、社会が持つ構造的な不平等や問題を軽視してはいけないという警鐘が鳴らされています。若年層や高齢者の状況を考慮しながら、より多様な視点で社会問題を考えることが求められています。これに対し、私たちはどのように向き合うべきなのか、引き続き考察していく必要があります。