リーガルテック社とAIデータ社が描くAI時代の知財インフラ
2025年の秋、リーガルテック株式会社とAIデータ株式会社が協力し、新しい知財戦略を展開することを発表しました。これは、AI(人工知能)技術が急速に進化する中で、特許や知財を効果的に管理・活用し、国際的な競争力を高めるための重要なステップです。
AX時代のAIの進化
AX(AI Transformation)時代では、AIの性能は、単にデータの量だけではなく、それを支えるインフラにも依存します。特に、半導体や高機能素材、冷却装置といった要素は、AIの実用化を支える基盤として不可欠です。また、日本はこれらの分野において依然として優位性を保っているものの、知財の活用という面では遅れが見られます。これが、グローバル競争の中で直面する課題となっているのです。
知財の現状と課題
日本の知財に関する現状にはいくつかの問題があります。第一の課題は特許のサイロ化です。多くの企業が個別に特許を出願していますが、それらを一つの戦略にまとめることができていません。このため、業界全体としてのポートフォリオ管理が弱いと言えます。次に、アメリカや中国、欧州などが国家戦略レベルで「AIハードウェア知財戦争」を仕掛けている中、日本もこれに適応していないと指摘されています。最後に、大学や研究機関からの発明が商業化や国際標準に結びつくことが少なく、研究と市場との間に明確な断絶があります。
新しい知財戦略の提供
これらの課題に対処するため、リーガルテック社は「知財AI × AIファクトリー」という新たなプロジェクトを立ち上げています。このプロジェクトは、知財のマイニングを効率化し、戦略的に活用するためのものです。
1.
Tokkyo.Aiによる特許マイニング
特許の出願動向をすぐに可視化できるAI検索エンジンを用いて、特に半導体や素材、部品、冷却装置に関する情報を対象とします。これにより、基幹特許や標準必須特許(SEP)を素早く抽出し、ポートフォリオのギャップを自動で分析します。
2.
AI IPGenius on IDXによる知財戦略支援
業種ごとの「標準テンプレート」を使って、包括的な知財インフラを整備します。こうした基盤を使い、研究成果をすぐに特許化して、共通の知財戦略を構築します。
3.
マネタイズ基盤の構築
知財マーケットプレイスを通じて、部品メーカーから大企業までのライセンス収益化を促進します。また、特許の価値診断をAIが行うことで、最適な収益モデルを提案します。
期待される効果
これらの取り組みにより、日本の国家競争力がさらに強化されることが期待されています。特に、AI半導体や素材分野での特許ポートフォリオが強化されることで、国際競争の中での主導権が期待されます。また、大学や研究機関、企業、ベンチャーが共有の知財基盤を活かして共同開発や標準化活動を加速し、持続的な収益モデルの構築が可能となります。これにより、技術や研究成果を産業資産として循環的にマネタイズすることが可能になります。
今後の展望
リーガルテック社とAIデータ社は、今後も「知財インフラ × AI基盤」を駆使して、AI時代に求められる新しい知財戦略を日本発で発展させていく計画です。この知財AI × AIファクトリーの取り組みは、産業の再編成を導き、日本の強みを国際競争力に変換する大きな一歩と言えるでしょう。これらの試みが、未来の日本と世界における産業競争にどう影響を与えるのか、今後の展開に注目が集まります。