新しい3D細胞培養技術ががん治療に革新をもたらす
TOPPANホールディングス株式会社、国立大阪大学大学院工学研究科、公益財団法人がん研究会、そして札幌医科大学の4つの機関は、再現が難しい難治性がんが持つ「バリア」を体外で再現する3D細胞モデルの構築に成功しました。この研究成果は、国際科学誌「Acta Biomaterialia」に掲載され、がん治療に新たな方向性を示しています。
背景:難治性がんと治療の壁
近年、がん免疫療法の進展により期待が高まっていますが、その一方で、特定の難治性がんではこれまでの治療が思うように成果を挙げていません。特に、がん細胞の形成する強固な「バリア」は、免疫細胞の働きを妨げ、治療効果を制限する原因となります。このバリアのメカニズムを解明し、打破することが、新たながん治療の鍵となります。
3D細胞培養技術「invivoid®」の役割
研究チームは、TOPPANホールディングスが開発した独自の3D細胞培養技術「invivoid®」を活用しました。この技術により、細胞の配置を管理することで、難治性がんの特性に近いモデルを構築しました。このモデルでの薬剤探索を通じて、バリアを打ち破り、免疫細胞によるがん細胞攻撃力を増強する新たな薬剤候補を発見しました。
研究成果の意義
本研究は難治性がんに対する創薬研究の革新をもたらす可能性があります。具体的には、約90種類の薬剤候補から、特定のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が、免疫細胞の攻撃力を向上させることが見出されました。このことは、がん細胞の排除や新しい治療戦略の開発につながるでしょう。
4機関の協力体制
本研究は、TOPPANホールディングスの3D細胞培養技術、大阪大学の組織工学的知見、がん研究会の薬物スクリーニング計画、そして札幌医科大学の研究統括が組み合わさることで実現しました。各機関の専門性を活かし、これまでのがん治療の限界を打破する研究が進められています。
今後の展望
新たに構築された3D細胞モデルは、がん微小環境における免疫細胞の侵入とその効果をさらに深く探る研究に利用される見込みです。今後も各機関はこの技術をもとに、創薬支援事業を加速させ、難治性がんへの新たなアプローチを模索していくとしています。
「invivoid®」とその可能性
「invivoid®」は、生体と同様の構造を持つ人工組織を構築することが可能であり、がん治療だけでなく再生医療や創薬研究など多岐に渡る利用が期待されています。
まとめ
TOPPANホールディングスをはじめとする4者によるこの研究は、がん治療の未来を明るく照らすものです。難治性がんとの闘いに向けて、新たな戦略が次々と生まれつつある今、このモデルの進展に大いに期待が寄せられます。研究成果が新しい医療の実現に向けた一歩となることを願っています。