人口減少社会における新たな都市のビジョン
近年、少子高齢化が進む日本は、人口減少の波に苦しんでいます。そんな中、大分県別府市で行われた共同研究プロジェクト「Post Growth City Lab」(以下、PGCL)が注目を集めています。このプロジェクトは、人口減少を前提にした持続可能な都市の形成を模索することを目的としており、2025年10月に実施したフィールドリサーチの結果をまとめた報告書を公開しました。
別府市の魅力
別府市は、豊富な温泉資源を有する地域であり、その資源を活かした様々な産業が発展しています。観光、医療・福祉、アート、国際教育といった多様な分野が結びつき、地域経済の基盤を形成しています。このような複合的な都市構造は、人口減少に直面してもなお、地域の持続可能性を高める要素となっているのです。PGCLの報告書では、別府市の都市構造を3つの重要なポイントにまとめています。
地域資源と産業のアップデート
報告書が示す一つ目のポイントは、地域資源の価値を継続的に更新するということです。温泉をベースにした観光および医療・福祉の二大産業は、さらに地域の特性を生かした新しい価値を創出しています。たとえば、「ハットウ・オンパク」のようなボトムアップ型の観光モデルや、企業や研究機関との連携により生まれる「新湯治・ウェルネス」が具体的な例として挙げられます。このような仕組みは、効果的な情報の交換や協力を促進し、地域のニーズを的確に把握する手助けとなっています。
挑戦の連鎖の設計
次に、別府市では多世代にわたる挑戦が継承される土壌が整備されています。たとえば、鶴田浩一郎氏や安波治子氏などの地域のリーダーが立ち上げたプロジェクトや企業が連携し、世代を超えた挑戦のプラットフォームを形成しています。このような挑戦が生まれる背景には、地域の価値を共有し促進する「共有資産」の設計があります。成功事例を一過性のものではなく、次の世代へと引き継ぐ仕組みが、日本の人口減少社会における持続可能なモデルの構築に寄与しています。
包摂的なインフラの重要性
最後のポイントは、多様な人材の受容と地域の担い手への転換です。別府市には、1965年に創設された「太陽の家」による障がい者雇用や、約100カ国の留学生を受け入れる立命館アジア太平洋大学(APU)などが存在します。これらは地域の包摂的なインフラとして機能し、多様な人材が地域で役割を果たせる環境を整備しています。このような多様性は、地域の活性化に寄与し、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となるのです。
今後の展開
別府でのフィールドリサーチは、PGCLの第一弾として位置付けられています。今後、熊本市を中心とする地域でのリサーチを予定しており、さらなるデータの収集と評価を進めていく方針です。このプロジェクトが成功すれば、他の地域にも応用可能な持続可能な都市モデルが生まれる可能性があります。
結論
今回の報告書を通じて、人口減少社会における都市の在り方について、多くの示唆を得ることができました。別府が描く新しい都市モデルは、全国にその波及効果をもたらすことが期待されます。これからの持続可能な地域づくりに向けて、多くの人々の参加が望まれることでしょう。