認知症を描いた衝撃のノンフィクション『全員悪人』文庫版発売
株式会社CEメディアハウスから、認知症当事者の真実の姿を描いたノンフィクション『全員悪人』の文庫版が2025年12月23日に発売されることが発表されました。著者の村井理子氏が、介護される立場から見た家族や周囲の人たちとの関係を鋭い視点で描写しています。この文庫版には、「五年後の霜秋」として新たに15ページも加筆されています。
認知症の当事者の声に耳を傾ける
『全員悪人』は、2021年に刊行されて以来、多くの読者からの関心を集めてきました。書店やオンラインでのレビューは300件を超え、認知症の理解を深める一助となっていると評価されています。特に、「未来の自分を重ね合わせて読んだ」という感想が多く、認知症の当事者としての心情や介護者との関わり方への理解が深まる内容となっています。
様々な感情が交錯する物語
本書では、認知症を患う母親が直面する切実な現実が描かれています。例えどんなに優秀な主婦でも、「知らない女」と称される介護士たちが毎日家にやってきて、描かれた家庭生活が変わっていく様子には、心の葛藤が隠されています。「どちらさまですか?」と問うその声は、家族の愛情と不安が交錯した言葉であり、読者に深く響くものです。
その中でも特筆すべきは、著者が「家族は人生の先達に対する敬意」と考え、必要な支援や手続きに対し冷静に対処していく姿です。これは多くの人が持つ認知症への偏見を払拭するヒントにもなりえます。
本書の内容と構成
本書は以下の章立てで構成されています。
- - プロローグ――陽春
- - 第一章 あなたは悪人――翌年の爽秋
- - 第二章 パパゴンは悪人――師走
- - 第三章 白衣の女は悪人――新春
- - 第四章 お父さんは悪人――晩冬
- - 第五章 水道ポリスは悪人――早春
- - 第六章 魚屋は悪人――初夏
- - 第七章 私は悪人――盛夏
- - 第八章 全員悪人――メモ
- - エピローグ――晩夏
- - あとがき
- - 文庫版補稿——五年後の霜秋
このように章を分けることで、さまざまな視点から認知症に関する深い考察が行われています。
村井理子氏のプロフィール
村井理子氏は1970年静岡県生まれ、現在は滋賀県を拠点に活動するエッセイストであり翻訳家です。過去には著書や訳書を多く手がけ、特に日常生活や家族関係をテーマにした作品が多くの支持を得ています。
最後に
認知症というテーマは、今後ますます多くの人々の関心を集めることでしょう。『全員悪人』は、そのリアルな描写と深い洞察を通じて、私たちに何を伝えているのか、多くの考えを促す一冊です。発売される文庫版には、新たな視点が加わり、さらに興味深い内容となることが期待されます。私たちの身近にある問題を再考するための貴重な機会を提供してくれる本書を、ぜひ手に取ってみてください。