神山町の魅力をつなぐ物語
徳島県神山町。そこの清流・鮎喰川に寄り添うように暮らす女性たちの生き様を紐解く新しい書籍が、2025年6月25日に公開される。この本は、地方創生の先進的な動きが実現する神山町に移住した女性たちのインタビュー集『まちは暮らしでつくられる――神山に移り住んだ彼女たち』であり、著者はフリーライターの杉本恭子氏。彼女の豊かな視点を通して、神山町のリアルな生活を感じ取ることができる。
本書は、「神山の生活史」とも言える内容となっており、移住者たちがどのようにこの町での生活を築いていったのか、その物語が生き生きと描かれている。
地方創生と個々の物語
「地方創生」という言葉が頻繁に聞かれるが、その理解は日常の小さな出来事の積み重ねによって成り立っている。本書は、著者が神山町に通って約10年の経験を活かし、移住した女性たちとの対話を通じて、地方の魅力を再認識させてくれる。ここに描かれた彼女たちの言葉は、「まちづくり」という大きなテーマを、シンプルで実際の事例として伝えており、その結果、読者は自らの暮らしへの新たな視点を得ることができる。
移住者たちの体験を通じて、彼女たちがどのように神山町と出会い、どんな理由でこの地を選んだのか、それぞれのバックグラウンドがいかにこの土地の風景を形成しているのかを知ることができる。この本を通じて、人々が自分の人生に何を求めているのか、どのように日常を育んでいるのかを問い直す機会となるだろう。
インタビューから浮かび上がる日常
本書には7章からなる目次が用意されており、各章は神山町の特性に基づいたテーマを持ち、それぞれの生活様式が描かれている。第1章では、川の存在がどれほど町を支えているかを探り、第2章は山との関係を深める人々、第3章ではアートがもたらす新しい関係性について考察されている。
特に、第5章の「食べる」を真ん中にした暮らしでは、地域の食文化がどのように生活に溶け込んでいるかが描かれています。この章では、地域の特色ある食材や、地元で取れるものを使った料理を通じて、神山町の温かさが伝わってくる。全体を通して、神山町はただの移住先ではなく、個々の人生を育む場であることが強調されている。
一人ひとりの物語が町をつくる
「はじめに」でも述べられているように、移住者たちのそれぞれの人生が向かう先に神山があり、その根源には通奏低音として共通した思いが存在する。この本は単なる移住の記録ではなく、「まちづくり」とは何かを考えるきっかけを与えてくれる。
地方創生に興味がある人や、神山町に関心を持つすべての人々にとって、読み応えのある一冊と言えるだろう。移住した女性たちの真摯な声を通して、あなた自身の生活を再考する時間を持っていただきたく思う。