運輸業、宿泊業、医療福祉業界に潜む健康リスクの実態について
2023年度のストレスチェックにおいて、運輸業、宿泊業、医療福祉業界の従業員が非常に高い健康リスクを抱えていることが明らかになりました。このデータは、株式会社ドクタートラストのストレスチェック研究所が、累計受検者211万人を超えるデータを基に分析を行った結果に基づいています。
調査の背景と目的
ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルスの状態を把握し、職場環境を改善するために行われるものです。2015年に制度化されて以来、従業員数が50名以上の企業で年に一回実施が義務付けられています。今回の調査対象として、2023年度にストレスチェックを受検した企業・団体1,390社からのデータを分析しました。受検者数は479,612人に上ります。
健康リスクランキング
調査結果によると、総合健康リスクが最も高い業種は以下の3つです。
1. 運輸業、郵便業
2. 宿泊業、飲食サービス業
3. 医療、福祉
これらの業種は、「上司・同僚からのサポート」や「仕事の負担」において特に高いリスクを示しています。運輸業では、サポートが少なく、仕事のコントロールも難しいという環境が影響していると考えられます。
また、宿泊業と飲食サービス業は、仕事の負担が大きく、体力的にも精神的にもプレッシャーが強いことが見受けられます。上記の業種は、特に業務の特性上、他の業種に比べてストレスを感じやすい環境にあることが分かります。
ストレスの要因
ストレスの要因としては、業務の負担や仕事のコントロールが挙げられます。宿泊業においては、仕事の量が過多で時間内に業務をこなすことが困難な状況が多く、限られた時間内でのプレッシャーがストレスを引き起こしています。
運輸業においても、業務を遂行する上での裁量があまり与えられておらず、それがさらなるストレスを招いているのです。加えて、上司や同僚からのサポートが不足しているため、孤立しているという感覚が従業員にストレスを与えています。
高ストレス者率とは
高ストレス者率とは、受検者に対して、高ストレスと判定された割合を示すもので、2023年度の平均は13.7%でした。特に高ストレス者率が高かった業種は、宿泊業、運輸業、製造業で、これらの業種においては新型コロナウイルスの影響と、その後の業務量の急増が背景にあります。
結論
全体的に見て、運輸業、宿泊業、医療福祉業界は高い健康リスクを抱えており、このまま放置されると、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす恐れがあります。企業側は、従業員の健康を守るための対策に取り組む必要があります。
今後、健康リスクの改善に向けた取り組みが求められ、本記事がその一助となることを期待しています。