メンタルヘルスにおけるAI導入と人の関与
先日、医療法人社団明照殿が行った、「企業の休職者対応と健康経営に関する意識調査」の結果が発表されました。この調査では、従業員50名以上の企業で人事・労務に関わり、過去3年以内に休職者への対応を経験した300名を対象に、メンタルヘルス対策としてのAIやアプリの導入状況とその意義について探りました。
調査によれば、メンタルヘルス対策の一環としてAIチャットやアプリを導入している企業の担当者79名のうち、59.5%が「身体面の不調を見極める際には人の関与が必要である」と回答しました。さらに、復職の判断にも57.0%が人の関与を重視していることが明らかになりました。これは、AI・アプリ未導入企業の約2倍の割合です。
全体の90.0%が何らかの場面で人が関与する必要性を感じており、特に「復職の判断」(39.3%)や「身体面の不調の見極め」(38.7%)といったポイントが重要視されています。このデータは、AIやアプリの導入が進む中でも、最終的には人間の判断が不可欠であることを示しています。
一方で、勤務先で何らかのメンタルヘルス対策および健康経営に取り組んでいると回答した268名のうち、実際に休職の予防や職場復帰に「十分つながっている」と感じている人は19.0%にとどまりました。この数値は、施策の効果が想像以上に限定的であることも反映しています。
最も難しいと感じる課題についても触れられ、「復職してよいかどうかの判断が難しい」と感じている人は41.7%に達し、「復職後の再発を防げない」という意見も38.3%あり、これらの課題に対しても産業医や専門家の関与が求められている状況です。
さらに、66.0%の回答者が、管理職や専門職などの重要なポジションの従業員が休職した際、対応で困ったと述べています。周囲の従業員にかかる負担や業務の滞りが見られる中、休職者への適切な対応が求められています。
また、メンタルヘルスの不調には身体面の要因が関連していると考える人も77.7%に上りました。医師の視点からのサポートが必要だと答えた人は85.3%です。この結果は、メンタルヘルス施策の中で身体的要因も考慮すべきであるという認識を強調しています。
このような実態に対し、理事長の小倉行雄氏は、「AIやアプリは不調の兆候を見極める一助として役立つが、最終的な復職の判断は人と人との関わりに依存する。健康経営は単なる福利厚生ではなく、企業が人材に対する投資であるべき」と述べ、その重要性を強調しました。
企業はAIツールを活用しつつも、あくまで人の判断と関与が必要な場面が多く存在することを再認識する必要があります。以上の調査結果は、医療法人社団明照殿が実施したものであり、メンタルヘルス対策における新たな指針となることが期待されています。
まとめ
今回の調査結果から、メンタルヘルス対策におけるAIやアプリの導入が進む中でも人間の関与が不可欠であることが明確になりました。特に復職の判断や身体面の健康状態の見極めにおいては、専門家の意見や判断が求められ、企業はより効果的な健康経営を実現するための手助けを必要としています。企業の健康経営を支えるために、医療機関との連携を強化することが今後の課題となるでしょう。