岐阜県高山市の魅力と伝統工芸
岐阜県高山市では、飛騨地方の伝統的な工芸品である「一位一刀彫」が、現在、来年の干支に合わせた馬の置物作りで賑わっています。これは江戸時代末期に彫師の松田亮長によって始まったもので、地域の特産材であるイチイの木を使用して、身近な自然と歴史を感じることができる貴重な手仕事です。
飛騨の伝統工芸「一位一刀彫」
「一位一刀彫」とは、彫刻刀を使い一切の機械を使わずに木を彫っていく技術で、その美しさと細やかな技術が評価されています。イチイには雷が落ちないという言い伝えがあり、そのため古くから厄除けの木とされてきました。この特別な木材を用いた置物は、ただの飾り物に留まらず、願いを込めた守護となり得るのです。
津田彫刻の家族の工房
高山市の本町にある「津田彫刻」では、代々続く伝統技術を受け継いでおり、兄弟二人が中心となって毎年新年の干支にちなんだ置物を手がけています。10月から始まるこの作業は、約200体の馬の置物を完成させる予定です。必要な道具は30種類以上の彫刻刀で、職人は素材の木目の美しさを引き出すため、丹念に曲線を削り出していきます。「馬のように駆け上がる一年になりますように」という願いも込められています。
さまざまなデザインとサイズ
今回製作される置物は、全長約9センチから約20センチのサイズまであり、手に取ってみるとその愛らしさと存在感に心を奪われます。年末までの間、津田彫刻では注文を受け付けており、毎年この時期には多くの人々が足を運びます。美しい一位一刀彫の馬の置物は、贈り物やインテリアにもぴったりです。
一位一刀彫を広める取り組み
高山市では、この伝統工芸を広報するために「一位一刀彫バッチ」を作成し、市役所職員が着用してその魅力を伝えています。このバッチには市のシンボルであるイチイや、花であるコバノミツバツツジ、飛騨に伝わるさるぼぼがデザインされています。これにより、地域のさらなる魅力を知ってもらう取り組みが進められています。
伝統と現代が交差する場所
高山市は、ただ観光地として訪れるだけでなく、伝統工芸に触れ、地域の文化を深く理解する場としても魅力を持っています。一位一刀彫のように、歴史とともに生き続ける技術は、この町のアイデンティティを形成している重要な要素です。年末に向けて行われる置物作りは、訪れる人々に喜びと感動をもたらしてくれることでしょう。
この冬、高山の伝統工芸に触れてみてはいかがでしょうか。温かみのある手作りの置物とともに、良い年を迎える準備を進めてみてください。