はじめに
日本の労働市場が抱える課題は年々深刻化しています。内閣府の調査によると、日本の生産年齢人口は2050年までに約29%減少する見込みです。特に岐阜県では、有効求人倍率が1.5と求職者にとって有利な状況にあるものの、2060年には約30万人の労働力不足が予想されています。このような状況の中で就労困難者の雇用推進が急務です。
就労困難者が抱える課題
岐阜市内には推定で4.8万人の人々が「働きたいが働けない」という状態に置かれています。彼らは多様な理由で働くことができず、制度の狭間にいるため公的な支援を受けられません。例えば、ひきこもりやニート、LGBTQ+の人々、刑余者や難病者など、支援が必要な人が増えている一方で、雇用拡大の取り組みが十分に進んでいないのが現状です。
ワークダイバーシティ実証化モデル事業
このような背景から、ワークダイバーシティ実証化モデル事業が立ち上げられました。この事業は、日本財団の助成を受けて進められており、全国6自治体において多様な就労困難者への支援を行っています。岐阜市での取り組みは2022年に始まり、54名が利用を開始し、17名が一般企業での就職を果たしています。
雇用施策検討会の設立
岐阜市は、地域企業17社の協力を得て「雇用施策検討会」を発足しました。この会は、企業が就労困難者をどのように受け入れ、活用していくかを議論する場です。共同発起人は、サンメッセ株式会社の田中信康氏、株式会社リーピーの川口聡氏、カンダまちおこし株式会社の田代達生氏の3名であり、彼らが議論をリードしています。
目的と目指すゴール
この検討会の目的は、働く意欲を持つ多様な人々に就労機会を提供することです。企業に求められる支援環境を整え、就労支援機関や行政との協働を通じて、社会全体で支援する仕組みを構築することが重要です。特に雇用施策検討会では、企業での就労困難者の受け入れ時に直面する課題について具体策を議論しました。この成果として、以下の四つの主要提言がまとめられました。
1.
ワークダイバーシティセンターの設置
2.
企業への支援制度・優遇措置の拡充
3.
広報・情報発信の強化
4.
障害者雇用の枠組みに「就労困難者」を含める制度改革への協力
特に1番と2番の提言は、企業が就労困難者を採用する際には不可欠な施策です。この提言書は、2025年7月31日に岐阜市の市長に正式に提出されました。
企業からの期待の声
共同発起人らは、企業の意見を反映した制度が整えば、全国に先駆けた取り組みとなり得ると発言しています。市長の柴橋氏も、「働き手が不足している今、支援が必要な皆さんが労働市場に加わることで、企業にとって大きな力となる」と力強いコメントを寄せています。
おわりに
岐阜県の取り組みは、就労困難者が社会に参画できる可能性を広げ、多様性を尊重した雇用環境を整える模型です。今後も継続的な議論と施策の実行を通じて、より多くの人々が自分らしく働ける社会を目指していく必要があります。皆が自分の強みを活かせる場所を見つけられること、それが真のダイバーシティの実現につながるでしょう。