新素材「HYPER21」の魅力
株式会社ソディックは、その最新技術を駆使して新しい金属3Dプリンタ用粉末材料「HYPER21」を発表しました。この新素材は、希少金属であるコバルトを含まないマルエージング系の粉末で、特に金属3Dプリンタの「OPMシリーズ」に対応しています。これまでの技術では形成中に内部に残留応力が発生し、その結果として造形物が歪むことがしばしばありましたが、「HYPER21」ではその問題を解決するために独自の「SRT(Stress Relief Technology)工法」を採用しています。この工法は、加工中に一定間隔で簡易的な熱処理を行うことで、残留応力を解放し、内部クラックや変形を抑止することが可能です。
新素材開発の背景と必要性
従来の金型造形で使われるマルエージング鋼の特性は、その強度にあります。しかし、その硬度がHRC50以上になると切削加工性に問題が生じ、仕上げ加工費用が増大してしまうという課題がありました。特に、大規模な部品の造形では、完成品の品質を確保するために数ミリの仕上げ加工が必要になることもあります。このような問題を解決するために開発されたのが「HYPER21」です。
HYPER21の特長
1.
精度向上:HYPER21はSRT工法を活用することによって、造形品の精密な仕上がりを実現します。この粉末を「OPMシリーズ」で使用することで、多様なサイズや形状のパーツが高精度に仕上げられます。特に、小さい部品の場合は、加工時間を短縮するためにSRT工法なしでの切削加工も選択可能です。
2.
優れた切削性と耐摩耗性:HYPER21の硬度はHRC40に調整されており、良好な切削性能と共に、量産にも適した耐摩耗性と強度を兼ね備えています。
3.
高靭性に支えられたクラック防止:このマルエージング鋼系の材料は非常に靭性が高く、造形中のクラック発生を低減します。実際の試験でも、長さ230mmの部品をクラックなく造形することが証明されています。
4.
加工後の高硬度化:時効処理を施すことで、HRC50以上の硬度も達成可能です。
5.
優れた耐食性:時効処理前のHYPER21は高い耐食性を持つため、使用中の腐食や保管時の錆の発生を防ぎます。
6.
環境規制への対応:HYPER21はコバルトを含まないため、「特定化学物質障害予防規則」および輸出規制の対象外です。硬度が上がることで引張強度も抑えられ、安全性も確保されています。
7.
安定した国内生産:粉末は日本国内で生産されており、安定供給と品質管理が徹底されています。
まとめ
「HYPER21」の登場によって、金属3Dプリンタの利用範囲が広がることが期待されます。高い切削性と強度を兼ね備えたこの新素材は、次世代の製造技術として多くの産業での活躍が見込まれています。また、環境への配慮や国内生産を背景に、今後も安定した技術革新が続くことでしょう。