世界エイズデーを迎えて考える子どもたちのHIV感染問題
12月1日は「世界エイズデー」。この日を迎えるにあたり、国連児童基金ユニセフが発表した報告書が注目されています。タイトルは「Their Future is on the Line: Cost of Inaction on HIV for Children」。この報告書では、HIVに感染した子どもたちを取り巻く厳しい現状が詳述されています。特に、HIVとともに生きる子どもや若者のサポートが不十分で、早期診断や治療へのアクセスが極めて限られていることが強調されています。資金の不足がこの問題をさらに悪化させる恐れもあります。
ユニセフと国連合同エイズ計画(UNAIDS)が行った予測によれば、支援プログラムが半減した場合、今後110万人の子どもがHIVに感染し、82万人がエイズ関連の病気で亡くなる可能性があります。恐ろしいことに、2040年には感染者数が300万人、エイズ関連死者が180万人に達するというのです。このまま現状の支援を維持しても、進展のペースが鈍化しており、2040年には190万人の子どもが新たに感染し、99万人がエイズにより死亡する見込みです。
この状況を受け、ユニセフHIV/エイズ担当副部長のアヌリタ・バン氏は「世界はHIV対策において進展を見せていたが、資金の削減により子どもたちへの支援が危機的な状況にある」と警告します。「今、投資を行わなければ、過去数十年の進展を取り消し、多くの若い命を失うリスクがある」とも述べています。
報告書では、2024年のデータを基にした子どもたちの実態も明らかにされています。12万人の子どもがHIVに感染し、さらに7万5,000人がエイズ関連で亡くなるという、驚くべき統計も示されています。これを日数に換算すると、毎日約200人の子どもが命を落とす計算になります。特に注目すべきは、15~19歳の若者の中で、新たに感染した150,000人のうち、66%が女の子であるという事実です。この年齢層における感染は、サハラ以南のアフリカ地域で85%が女の子であるとされています。
現在、HIVに感染している子どもたちのうち、抗レトロウイルス治療を受けているのはわずか55%に過ぎません。大人が78%治療を受けていることと比較すると、非常に低い数字です。その結果、約620,000人の子どもたちが必要な治療を受けることができていません。
特に状況が深刻なのはサハラ以南のアフリカ地域で、ここではHIVにかかる子どもたちの88%、新規感染の子どもたちの83%、エイズ関連死者の84%がこの地域に集中しています。
一方で、持続的な取り組みにより進展が見られる地域もあります。これまでに、2000年から2024年の間に440万人のHIV感染と210万人のエイズ関連死が抑制されたと推定されています。特に注目すべきは、モルディブがHIV、梅毒、B型肝炎の母子感染撲滅を達成した初の国であることです。
ユニセフは世界各国に対し、母親や子ども、若者のHIV支援サービスの優先的な保護を呼びかけています。具体的には、母子感染予防や小児治療の拡充、HIV治療ケアの保健システムへの統合、持続可能な資金調達による安定した資金確保の重要性が指摘されています。
この世界エイズデーを契機に、多くの人がHIVの問題について考え、行動を起こすことを期待します。子どもたちの未来を守るために、今すぐ行動が求められています。