非金銭的報酬の重要性が増す時代
日本企業の経営課題に関する調査によると、各企業が人材を確保するために取り組む「総合的報酬(トータルリワード)」の中で、非金銭的報酬の価値が高まっていることが確認されました。賃金的な見直しが一巡した現在、企業は「働きやすさ」や「成長の機会」を重視した報酬の拡充に力を入れています。特に、企業が「ワークライフバランスの改善」に注力する割合は78.9%にも達しており、生活の質を高める取り組みが顕著な結果として現れました。
また、基本給の見直しも75.5%の企業が行っており、物価高騰の影響を受けつつも、社員の収入を見直す姿勢が見られます。これらの施策は、今後の人材獲得競争において鍵となるでしょう。
従業員満足度の向上
特に注目すべきは、非金銭的な報酬施策について「今後の見直し・拡充」を期待する企業が多く、具体的には20%から35%の企業が対象施策の実施を計画しています。これは、単なる賃金引き上げではなく、職場環境や働き方に対する従業員の満足度向上が重要視されていることを示しています。企業は、いい職場環境を整えることが人材確保の重要な要素であると考え、様々な取り組みを進めているのです。
実施を計画している施策の中でも、業務改善やデジタルトランスフォーメーション(DX)による効率的な業務運営や、若手社員の賃金見直しを視野に入れた人事制度の再構築、手当の見直しが続々と上がっています。
マネジメント戦略の重要性
調査の結果から見えてきたのは、企業の人材確保に成功している企業は、金銭的報酬だけでなく、柔軟な働き方や成長機会の提供など、非金銭的な施策を豊富に取り入れているということです。特に、採用活動や人材確保においては、働きやすさが重要なファクターとして際立っています。
一方で、離職率を低下させるには、基本給や賞与の見直しといった金銭的な施策も重要であることがわかりました。これは、従業員を引き留めるためには現実的な報酬も必要であることを強調するものであり、単一の施策ではなく、金銭と非金銭の両面からのアプローチが求められます。
経営課題に向き合った人材戦略を
現在の市場で成功するためには、自社の経営課題をしっかりと捉え、それに基づいて総合的な報酬戦略を計画・実行することが不可欠です。それぞれの企業が抱えるユニークな課題に応じて、適切な人員計画を策定することが必要となります。今後の企業は、時代の流れを先取りし、社会全体のトレンドに応じた戦略を展開しなければなりません。柔軟な働き方の導入や成長機会の提供が企業の競争力を高め、人材確保に繋がるため、今後もこれらの施策をしっかりと進める必要があるでしょう。
この調査結果は、2024年度までの企業経営戦略を考える上での重要な指針となることでしょう。詳細な結果については、報告書が2025年4月1日以降に日本能率協会のHPで公開予定です。