未来をつなぐ音楽の祭典、アルス・エレクトロニカ2025での特別なパフォーマンス

アルス・エレクトロニカ・フェスティバル2025の特別な取り組み

2025年9月、オーストリア・リンツにて開催されるメディアアートの権威あるイベント、「アルス・エレクトロニカ・フェスティバル2025」で、一般社団法人El Sistema Connectによる特別パフォーマンス『第九のきせき』が披露されます。また、同祭以降に体験型写真展も実施され、音楽と視覚芸術のコラボレーションをお楽しみいただけます。

『第九のきせき』パフォーマンスの魅力

『第九のきせき』は、ベートーヴェンの交響曲第9番「歓喜の歌」を手話（手歌）と声で一緒に演奏するという独特の試みです。このパフォーマンスは2021年から続けられ、多様な聴衆とつながる、大変意義深い活動とされています。今回はホワイトハンドコーラスNIPPONの芸術監督、コロンえりかが主導し、オープニングセレモニーが9月3日の19:30から行われるマリエン大聖堂横の野外ステージで予定されています。

コロンえりかは、ベネズエラ出身のソプラノ歌手であり、教育学を背景に持つ彼女は、障がいを持つ子どもたちへの音楽教育にも力を入れています。パフォーマンスでは、Linz Sign Language Choriと共に手歌のワークショップを実施し、約3,000人の聴衆が一体となる合唱の場面は、感動的な瞬間となることでしょう。

体験型写真展の展開

フェスティバル開催期間中には、マリエン大聖堂で『第九のきせき』をテーマにした体験型写真展も行われます。この展示は、手歌の動きを光のビジュアルとして表現したもので、作品名は「Visible ‘An die Frede’（見える『第九』）」です。

写真家の田頭真理子が手掛けたこの作品群は、音楽を可視化することで観客に新たな視覚体験を提供します。田頭は広島出身の写真家で、多くの広告やプロモーション撮影を手がけながら、障がいのある子どもたちとの出会いからインスピレーションを受け、「第九のきせき」の制作を行うようになりました。

ホワイトハンドコーラスNIPPONの活動

ホワイトハンドコーラスNIPPONは、多様なメンバーが集まるインクルーシブな合唱団です。ろう者や難聴者、視覚障がいを持つ方々など、すべての子どもに音楽の喜びを提供するため、2019年に設立されました。彼らは、障がいに関係なく音楽を学び、参加できる環境を整えています。

本団体は「エルシステマ」の理念に基づき、平等な音楽教育を実践することを目的としています。そして、手話での歌唱と声での合唱を融合した表現は、未来の音楽芸術の新たな可能性を示唆しています。最近では、数々の受賞歴も持ち、国際的なバリアフリー活動への取り組みも進めています。