6G時代に向けたテラビット級無線通信の実現に向けた取り組み
近年、6G時代の到来が予想される中、NTT、ドコモ、NECの3社が共同でインフラの構築に向けた取り組みを加速させています。本記事では、彼らの最新の研究成果に焦点を当て、どのようにして大容量無線通信が実現されるかを探ります。
背景と目的
2030年代に向けて、無線通信の需要は急速に高まることが予想されています。特に自動運転や遠隔医療といった高度な技術の普及に伴い、無線通信が支えるデータ量は飛躍的に増加するでしょう。このため、NTT、ドコモ、NECの3社は、無線通信容量の向上に向けた研究を進めてきました。
最近の発表において、彼らは71 GHzから86 GHzのミリ波帯を利用した新たな無線伝送技術を用い、双方向で毎秒140ギガビットの伝送に成功したと発表しました。これは従来技術の2倍以上の速度であり、将来的な6Gの通信基盤としての可能性を広げます。
OAMモード多重伝送技術の実用化
この成果を実現するために採用されたのが、OAM(Orbital Angular Momentum:軌道角運動量)モード多重伝送技術です。この技術によって、同じ周波数の電波を使いながら、異なるOAMモードを持つ信号を多重して送信することが可能になります。これにより、固定局間の無線伝送容量が大幅に増大します。
更に、OAMモードの制御技術によって、長距離伝送を実現したり、反射経路を活用することで、通信の柔軟性を高めることが証明されました。この進展により、光ファイバに依存せず、無線を利用した新たなバックホールの構築が期待されています。
実証実験の成果
今回の研究では、具体的に3つのシナリオで実証が行われました。22.5 m、45 mの距離における双方向伝送実験や、壁を介した反射シナリオでの実験が含まれ、各シナリオで高い伝送容量を達成しています。実験の結果、最も優れた結果は毎秒139.2ギガビットに達しました。
特に注目すべきは、これらの技術が災害時の臨時回線としての利用や、イベント時の移動基地局との接続にも役立つ可能性がある点です。
今後の展望
NTT、ドコモ、NECの研究チームは、今回の成功を踏まえ、6Gの実現にむけたさらなる大容量無線通信技術の開発を進める意向を示しています。今後の展開としては、VR/ARや高精細映像伝送、さらにはコネクティッドカーの運用や遠隔医療の実現に向けた基盤技術を提供する計画です。
受信側での信号処理技術の進歩により、無線接続の信頼性と速度は格段に進化することでしょう。6G以降の通信システムにおける新しい無線バックホールとして、目的に応じた多様な利用が期待されています。
この画期的な技術は、私たちの生活を根本から変える可能性を秘めています。今回の取り組みによって、6G時代の到来が一層楽しみになりました。