2025年問題を迎える日本、デジタル入れ歯製作が鍵となる？

今後日本が直面する「2025年問題」は、団塊の世代が75歳以上になることに伴い、医療や介護の需要が急増するという懸念を孕んでいます。特に、歯科業界もこの問題の影響を受けており、義歯の製作が困難になる可能性が高まっています。そんな中、歯科技工所を運営する株式会社お守り入れ歯が、デジタル化を進めることで新たな解決策を提示しています。

デジタルに移行する義歯制作

株式会社お守り入れ歯（北海道札幌市、代表取締役：池田昭）は、2021年からデジタルデンチャーの製作を開始しました。このデジタルデンチャーは、3Dスキャナーを使用して形状データを取得し、そのデータを基に3Dプリンターで義歯を製作するというものです。すでに1,000個以上のデジタルデンチャーを製作しており、全国の歯科医院との提携も進めています。

技術の進歩により、義歯製作の効率が大幅に向上しています。通院回数を減少させつつ、短期間で高精度な義歯を提供することができるのです。また、手間がかかる作業が減少し、製作工程の効率化にも繋がります。このようなデジタル化のメリットは、今後の高齢社会に向けた重要な解決策となるでしょう。

高齢化が進む日本での義歯問題

2025年問題は、日本社会が抱えるさまざまな課題の中で特に医療分野において深刻です。労働人口の減少や医療体制のひっ迫によって、義歯を必要とする多くの高齢者が入れ歯を作ることができなくなる恐れがあります。特に、技工士不足が深刻で、多くの技工士が義歯製作に従事することをためらう状況が続いています。専門学校では定員割れが目立ち、将来的な技工士の供給が危惧されています。

デジタル化がもたらす可能性

デジタル義歯の導入は、こうした問題を緩和する可能性を秘めています。地域によっては、医療資源が不足しているため、デジタル技術を活用することで、医療提供の均衡を図ることができるかもしれません。さらに、デジタル化により、作業効率や生産性が上がり、技工士の離職率を低下させる要因にもなります。現在は、プラスチック部分のみのデジタル製作が可能ですが、将来的には金具などもデジタル化され、さらに効率的な製作が期待されています。

保険適用と今後の展望

ただし、デジタルデンチャーの導入には障壁も存在します。元々、義歯は保険適用外であるため、患者の負担が大きく、医療機関の導入は進んでいないのが現状です。これに対し、代表の池田氏は「義歯のデジタル診療が保険適用されることが急務である」と訴えています。保険適用されれば、自ずと需要が高まり、より多くの医療機関がデジタル化に取り組むようになるでしょう。