青木彬の新刊『幻肢痛日記』が10月25日に登場
インディペンデント・キュレーターの青木彬氏が、自身の幻肢痛体験を赤裸々に綴った新刊『幻肢痛日記 無くなった右足と不確かさを生きる』が、2024年10月25日に出版されます。この本は、青木氏が足を失った後に経験した不思議な現象である幻肢痛についての詳細な記録です。
幻肢痛とは
幻肢痛とは、手や足が切断された後にも、失った部位が痛むといった奇妙な痛みのことを指します。この現象は、切断された手足の感覚が脳内に残っており、身体の地図が再構築されることが原因とされています。統計によると、切断手術を受けた人の50%から80%が、この幻肢痛を体験すると言われています。
青木氏は、12歳の時に患った骨肉腫が原因で右足に人工関節を入れ、30歳でその足を切断しました。感染症のリスクを避けるために切断を選択しましたが、それに伴って幻肢痛を経験することになりました。成し遂げた選択がもたらした新しい現実を、青木氏はどのように受け止めたのでしょうか。
幻肢痛体験の日記
青木氏の幻肢痛に関する初めての体験は、病室のベッドで起こりました。彼は自身の幻肢が痛む声を、まるで「ここに右足があったんだよ」と言われているように感じたと言います。このような体験は、彼にとって「無いものの存在」への意識を高めるものであり、また「不確かさ」を肯定する新たな視点を与えてくれたのです。
新刊では、切断後の生活や日々の出来事、思索を通じて、社会的な問題やマイノリティの声と向き合う姿が描かれています。特に青木氏は、目に見えないものへの想像力を広げながら、社会のなかで抑圧される人々の理解を深めようとしています。
幸せな瞬間と痛み
ある日、青木氏は初めて昼間の電車に乗った際、優先席に座っていたところ、目の前に立つ女性に対して「右足がぶつかる!」という緊張感を持ちます。その瞬間、無いはずの幻肢が彼女に触れてしまうという不思議な経験をしました。この体験は、幻肢がどのように彼の意識に影響を与えるのかを示す重要なケーススタディとなっています。
本書は、彼の個人的な戦いの記録だけではなく、読者に新たな視点を提供する一冊です。この経験を通じて、彼は恵まれていない状況下でも生き延び、思索を重ねていく過程を記録しています。
推薦コメント
本書には、推薦コメントも寄せられています。医学書院の「ケアをひらく」編集者である白石正明氏は、青木氏の経験を通じて「『ない』と『ある』の間に広がる荒野を探検する」と表現しています。この著作は、私たち自身も既に「ない」と「ある」のグラデーションを生きていることに気づかせてくれます。
刊行記念イベント
『幻肢痛日記』の刊行を祝うため、2024年11月11日には東京・下北沢で特別なイベントが開催されます。「ケアリングノーベンバー」というテーマのもと、青木氏と白石氏によるトークセッションが行われ、彼らの視点をより深く知ることができる貴重な機会です。興味がある方は、ぜひ参加をご検討ください。
青木氏の新しい一歩を踏み出す作品『幻肢痛日記』は、人間の身体と心に関する深い考察を提供してくれることでしょう。また、彼の人生と闘病の記録は、多くの人々にとって共感を呼ぶ内容となっているに違いありません。