建設現場の新たな安全基準を目指して
萩原建設工業株式会社は、アーキット合同会社と手を組み、建設現場での接触事故を未然に防ぐための「重機の後方警戒AI(仮称)」を開発しました。このシステムは、運転席から見えない場所にいる人や物体をAIが認識し、リアルタイムで警告を発信するという、全く新しいアプローチを取っています。
開発の背景
建設現場では、作業員の安全確保が常に重要な課題です。過去の接近検知システムは、ICタグを利用して作業員の位置を把握したり、バックカメラによって人物を検出したりするものでした。しかし、ICタグを持たない作業員や無警戒な通行者の存在が、多くの事故を引き起こす可能性があります。このようなリスクを解決するべく、萩原建設工業は、信頼性の高い新たな安全対策を求めてアーキットと共同研究を進行してきました。
システムの全貌
重機の後方となる死角に広角カメラを設置し、その映像をAIが解析することで、周囲の人や車両、重機、さらにはカラーコーンを同時に検知できる仕組みとなっています。運転席には専用モニターが設置され、さらに重機のパトランプや外部モニターを通じてリアルタイムに警告が伝わるため、運転手のみならず周囲の人々にも安全性が期待されます。
主な特徴
- - 死角カバー: 重機の後方および側方にカメラを配置。
- - AIによる検知: リアルタイムで様々な物体を認識。
- - 即時警告: 検知対象が近づくと、即座にパトランプで警告。
- - モニター表示: 運転席および外部モニターで検知状況を表示。
- - 柔軟設定: 検知対象はカスタマイズ可能。
この新しいAIシステムは、従来の技術とは異なり、運転席の操作や機器の設置に難しさを感じることもなく、現場の状況に応じた柔軟な対応が可能です。さらに、AIが各現場に特化した学習を行い、より洗練された検知能力を持つことが期待されます。
今後の展望
月日が経つにつれ、重機の運転者が減少し、自動施工や遠隔施工など新しい技術が普及する中で、接触事故のリスクが増加することが懸念されています。こうした状況で、重機の後方警戒AIは、現場での安全確保の強力な味方となるでしょう。
萩原建設工業は、2025年度中の本システムの実運用を目指しており、NETISへの登録申請を進めています。これにより、建設業界全体の労働環境を改善し、安全性向上に寄与することを目指しています。
開発担当者の声
萩原建設工業の技革推進部デジタル推進課長、髙山正宏氏は「今回のAIシステムは、従来の重機接近検知では実現できなかった幅広い対象物を検知できる点が大きな利点です。何よりも現場での安全性を追求しました」と語ります。今後もさらなる技術進歩と、労働環境の向上に向けた努力を続けていくとのことです。
このように、「重機の後方警戒AI」は、建設現場における新しい安全基準を提供するものであり、業界に革命をもたらす可能性を秘めています。