千葉県松戸市の弓道界を牽引する本村昌克範士八段の軌跡

0.05％という狭き門「範士」に選出

松戸市は千葉県内でも屈指の弓道の名門地であり、2022年には「全国高等学校弓道選抜大会・団体戦」で優勝を果たすなど、その名を高めている。しかし、松戸市での弓道界の中心的人物、それが本村昌克範士八段です。昨年11月に、全日本弓道連盟が定める最高位「範士」の称号を獲得した本村範士は、40年以上にわたって弓道に人生を捧げてきました。本記事では、彼の弓道に対する情熱や指導者としてのビジョン、そして松戸市の未来に向けた思いをお届けします。

厳しい選考を経て「範士」に選ばれる

弓道は、級位や段位に分けられた階層的な体系を持つ武道です。高段者の中から「範士」称号を得られる者は、後輩の指導や弓道普及に貢献し、その模範となる人物です。本村範士は、推薦制で選ばれるこの称号を得た、全国わずか70名ほどの特別な存在です。弓道人口が約14万人いる中で、0.05％にあたる選ばれし者の一人となった本村範士の物語には、感銘を受ける人が多いのも納得です。

父の教えから始まった弓道人生

本村範士が弓道を始めたきっかけは、父が弓を引いていたことにあります。「高校1年生のときに弓道を始めました。それ以降、弓道は生涯現役で取り組める武道として、私の人生の一部になりました」と語る本村範士。その生涯の道のりは決して平坦ではありませんでした。高校時代、早期に矢を放つ「早気」という病に悩まされた本村範士は、大学でも弓道を続け、克服を目指しました。「心を澄ませ、射法八節を自分のものにする過程が特に好きです」と話します。

教えと学びの場、指導者としての経験

大学卒業後、本村範士は松戸市の中学校で弓道部の顧問として指導を行っています。「後継者育成」に励む姿勢は、学生たちにも大きな影響を与えています。彼は、中学生たちが成長していく姿を見守ることで、指導の喜びを感じます。「活躍する生徒が増えてくることは非常に嬉しい」と満面の笑みを浮かべる本村範士。今春には松戸市立第六中学校で、全体の入部希望者が60人を超え、29人が弓道部に入部しました。

未来の弓道を見据えた環境整備

成長を続ける弓道人気について、本村範士は「アニメ影響もあり、多くの若者が弓道に興味を持っています。松戸市内に充実した弓道場が必要です」と話します。松戸市には現在、二つの中学校に弓道部がありますが、十分な練習環境を整えるためには、広い道場が求められています。弓道の魅力を多くの人に広めるための環境作りが、今後の大きな課題です。