エゾウィンが挑んだアイスマラソンでのウェアラブルGPS実験
エゾウィン株式会社が2025年に開催されたアイスマラソンに参加し、同社の開発したみちびきCLAS対応の高精度GPSロガーを用いて、ウェアラブルデバイスの精度を実験的に検証しました。この試みは、測量や現場安全管理においてますます高まる「人の高精度な位置情報」に対するニーズに応えるための基礎研究として位置付けられています。
障壁となる「人体」
近年、測量やインフラ点検、安全管理などの現場で、センチメートル単位での正確な位置情報が求められていますが、その背後には重大な課題が存在します。それは、人体自身が衛星信号の受信を妨げる障害物となることです。最高のアンテナや受信装置でも、身体のどの部位に装着するかで、測位精度が大きく変わる可能性があるため、実際に試してみることにしました。この実験は、単なる好奇心から始まったものです。
検証の概要
今回の試験では、エゾウィンのエンジニアがアイスマラソンの4kmコースに挑戦し、みちびきCLAS対応のGPSロガーのアンテナを2つの異なる位置に装着してデータを収集しました。具体的には、以下の2つの部位にアンテナを設置しました。
1.
頭部:ヘルメットにアンテナを取り付け、受信精度を測定。
2.
背部:身体の背中にアンテナを取り付けた際の測位データを比較。
測位精度の結果
実験の結果、頭部に装着した場合のFIX率(固定解の維持率)は驚異の99.7%を記録しました。一方、背部装着時のFIX率は5.6%という結果になりました。このことから、頭部にアンテナを装着した際が、衛星信号の遮蔽物が何もない最も良好な環境であることが明らかになりました。
興味深いデータの発見
興味深いことに、往路では背部にアンテナを装着しても一定程度の精度を保っていましたが、復路に移るとFIX率が急激に低下しました。その理由として、戻り際に利用する準天頂衛星「みちびき」がランナーの南側に偏って配置され、身体がその信号を遮り、精度を落としたと考えられます。これは、ウェアラブル測位において「装着位置」だけでなく、衛星の配置による影響も考慮する必要があることを示唆しています。
高精度測位の未来
今回のアイスマラソンでの検証は、貴重なデータを提供し、ウェアラブル測位のさらなる可能性を示しました。現在、測量やインフラ管理などで、人体や動きの位置を高精度で把握したい意向は高まっています。しかし、装着する位置次第で精度が変化することが明らかになったことは、今後の研究において重要な教訓です。エゾウィンは、様々な現場における最適なデータ取得法を追求し続けます。
エゾウィンについて
エゾウィンは北海道標津町に本社を置き、2019年に設立されました。精密な位置測定とデータ分析に特化した企業で、農業やインフラ関連分野での技術革新を目指しています。近年数々の賞を受賞し、その技術は注目されています。私たちの使命は、日本の食糧生産を支援することです。2021年に130万人だった農業従事者は2040年には35万人に減少すると予測され、今後の日本の食糧生産は危機に瀕しています。エゾウィンはこれを打破するため、高精度の技術を通じて変革をもたらすことを目指しています。