新たなプラットフォーム分子の合成手法
東京理科大学の研究チームが、特異な構造を持つ新型プラットフォーム分子の合成に成功し、これを利用することで3種類のクリック反応を連続的に実行できるワンポット合成法を確立しました。この研究の成果は、2025年1月8日に国際学術誌「Chemical Communications」に掲載されました。
研究の概要
本研究をリードしたのは、先進工学部 生命システム工学科の吉田優准教授を中心とするチームです。このグループは、アジド基、アルキニル基、フッ化スルホニル基という3種の置換基を持つプラットフォーム分子を設計・合成。各種クリック反応を経由して、多機能性分子の効率的な集積が可能であることを示しました。
クリック反応は、分子同士の結合を簡便に行う手法として知られていますが、今回の研究では、アジドとアルキニル基の反応性を活かしつつ、3つの異なる反応を同時に行える方法を導入。特に healingによる医療応用が期待されています。
新型プラットフォーム分子の特性
クリック反応には、アジド−アルキン環化付加などがあり、これは医療や創薬の領域で非常に有用です。しかし、これまでアジド基とアルキニル基を有する分子で選択的な反応を実現することは非常に難しい課題でした。本研究では、その課題を乗り越えるべく、新たなプラットフォーム分子を導入し、フッ化スルホニル基との反応を通じて、さらに高い選択性を実現しました。特に、アジド−アルキン間での副反応が抑制されるようデザインされ、各工程での安定性が保証されています。
ワンポット合成法の検討
本研究の中で、研究チームはプラットフォーム分子に対して硫黄−フッ素交換反応とアジド−アルキン環化付加を行うワンポット手法を確立しました。この手法では、数種類の触媒や試薬を加えても、各反応が中断することなく続行できる点が特筆されます。この効率的なプロセスにより、反応後も分離操作を省くことが可能となり、合成の実用性が大きく向上しました。
将来の展望
吉田准教授は、「私たちは、この新技術がライフサイエンス研究に革新をもたらし、多機能性分子や多様な中分子の簡便な合成へとつながることを目指しています。今回の研究は、創薬や材料科学において新しい可能性を切り開くものです」と語っています。
研究の背景
この研究は、日本学術振興会の科研費や旭硝子財団の助成を受けて実施されました。プラットフォーム分子の合成は、材料化学やケミカルバイオロジーにおいて特別な注目を集めており、これまでの技術を越える新たな手法の開発が求められていました。今回の成果が、今後の医療や科学技術に大きな影響を与えることが期待されます。
論文情報
研究成果に関する詳細な情報は、以下の通りです。
雑誌名:Chemical Communications
論文タイトル:Three-step click assembly using trivalent platforms bearing azido, ethynyl, and fluorosulfonyl groups
著者:Takahiro Yasuda, Gaku Orimoto, Suguru Yoshida
DOI:10.1039/D4CC06585A