自動運転の未来を拓く、電波法の新たな息吹
日本の未来を大きく変革する可能性を秘めた自動運転技術。その本格的な社会実装が現実味を帯びる中、総務省が重要な一歩を踏み出しました。この度、自動運転の“目”ともいえる通信を支える5.9GHz帯V2X通信システムに関する電波法関係審査基準の改正案が策定され、広く国民からの意見募集(パブリックコメント)が開始されました。
なぜ今、電波法の改正が必要なのか?
自動運転車は、車載センサーだけでなく、周囲の車やインフラ、歩行者などとリアルタイムで情報交換することで、安全かつ効率的な走行を実現します。この通信技術が「V2X(Vehicle-to-Everything)通信システム」と呼ばれ、特に5.9GHz帯はこのシステムに割り当てられた重要な周波数帯です。しかし、既存の電波法関係審査基準では、V2X通信システムの実験試験局の免許交付手続きに一定の時間を要するケースがあり、これが技術開発や大規模な実証実験のスピードを妨げる可能性がありました。
総務省は、こうした課題を解決し、自動運転の社会実装を加速させるべく、これまで多角的に議論を重ねてきました。
- - 「自動運転時代の“次世代ITS通信”研究会(第二期)中間取りまとめ」:2024年9月に公表されたこの報告書では、5.9GHz帯V2X通信システムの実用化に向け、「新東名高速道路をはじめとする実験の実施に向けて、免許交付手続きの迅速化・円滑化を図るべき」との方向性が示されていました。
- - 政府全体の取り組み:さらに、政府が掲げる「デジタルライフライン全国総合整備計画」(2024年6月デジタル社会推進会議決定)や、国土交通省道路局、警察庁交通局、総務省総合通信基盤局が共同で設置する「自動運転インフラ検討会」での議論も、今回の改正案の背景にあります。
これらの議論を踏まえ、総務省は関係省庁や道路・車両関係者と密接に連携。2025年度からは、新東名高速道路の一部区間において、5.9GHz帯V2X通信システムを利用した自動運転トラックの走行実証実験を実施し、その有効性を検証する予定です。こうした大規模かつ重要な実証実験を円滑に進めるためにも、実験試験局の免許手続きの迅速化は喫緊の課題と認識されています。
改正案の主なポイントと期待される効果
今回の訓令案の核心は、
「5.9GHz帯V2X通信システムと既存の無線システムが共用可能である道路区間において、実験試験局の免許手続きの迅速化・円滑化を図るための制度整備」にあります。
これにより、以下のような効果が期待されます。
- - 開発・実証の加速:自動運転技術の研究開発を行う企業や研究機関が、よりスピーディーに実証環境を構築できるようになり、技術開発が加速します。
- - 社会実装の前倒し:大規模な実証実験が滞りなく実施されることで、自動運転技術の実用化、ひいては社会実装が前倒しされる可能性があります。
- - 国際競争力の強化:迅速な制度整備は、日本の自動運転分野における国際競争力の強化にも寄与するでしょう。
国民からの意見を広く募集
総務省は、この重要な改正案に対する国民や関係者からの意見を広く募っています。パブリックコメントを通じて寄せられた意見は、今後の制度設計に大きく反映されることになります。
- - 意見募集対象:電波法関係審査基準(平成13年総務省訓令第67号)の一部を改正する訓令案(別紙1参照)
- - 意見提出期間:令和7年5月30日(金)から令和7年6月28日(土)まで(必着)
詳細な意見公募要領や関連資料は、総務省のウェブサイトの広報・報道資料一覧、または電子政府の総合窓口「e-Gov」の「パブリック・コメント」欄にて閲覧可能です。未来のモビリティ社会を共に築き上げていくため、関心のある企業、団体、そして個人の皆様からの積極的な意見提出が期待されます。
今後の展望
総務省は、今回の意見募集の結果を踏まえ、改正の所要の手続きを速やかに進めていく方針です。自動運転は、単なる移動手段の変化に留まらず、物流の効率化、新たなビジネスモデルの創出、過疎地域の移動手段の確保など、社会全体に多大な恩恵をもたらす可能性を秘めています。
今回の電波法改正案は、その実現に向けたインフラ整備の重要な一歩と言えるでしょう。安全で豊かな社会の実現に向け、総務省の今後の取り組みに、引き続き注目が集まります。