透明性と吸湿性を兼ね備えた医薬品包装向けPTP用樹脂シートの開発
大日本印刷株式会社(DNP)が、医薬品の包装に革新をもたらす新しいPTP用樹脂シートを発表しました。このシートは、口の中で溶けるOD(Orally Disintegrating)錠のように水分に敏感な製剤に最適化されており、湿気による品質低下を防ぐことができる特性を持っています。従来のアルミブリスターに代わるものとして、透明性と吸湿性を兼ね備え、医療現場における利便性を高めるとともに、安全性にも貢献しています。
PTPシート開発の背景
OD錠などの医薬品は、湿気にさらされると品質が落ちやすい特性があります。これまでの包装材は、湿気を遮断するためにアルミ箔を使用した非透明のアルミブリスターなどが主流でした。しかし、この方法では、中身が見えないため薬剤師や製薬メーカーが検査を行う際に手間がかかりました。また、アルミブリスターを使わない場合でも、乾燥剤を封入する必要があり、これが手間とコスト面での課題となっていました。そこでDNPは、自社の吸湿包材技術を基にした、透明でかつ吸湿性能を持つPTP用樹脂シートの開発に至ったのです。
新PTP用樹脂シートの特長
1. 医薬品の品質を守る吸湿効果
新開発のPTP用樹脂シートは、4g/㎡という高い吸湿性能を備えています。これにより、シート内部の残存水分を吸収し、製品の品質低下を未然に防ぐことができます。従来のシートは水蒸気の透過を防ぐためのバリア性能が重要でしたが、DNPのシートは吸湿機能を持ち、内部環境を適切に保つことが可能です。
2. 明確な視認性
透明性を兼ね備えたこのPTP用樹脂シートは、内容物を明確に確認できるため、製剤の誤飲を防ぐ効果があります。また、調剤薬局でのピッキング時には、湿度に弱い製剤を簡単に管理できるため、作業効率の向上にも寄与します。
3. 高い防湿性能と環境配慮
DNPの新しいシートは、外部からの湿気の透過を防ぎつつ、その湿気を自主的に吸収します。さらに、使用する基材はリサイクル可能なPP(ポリプロピレン)とPVC(ポリ塩化ビニル)から選択でき、環境にも配慮した設計がされています。
今後の展望
DNPは、開発した透明PTP用樹脂シートを医薬品メーカーに提供し、2030年度までに年間3億円の売上を見込んでいます。また、2025年7月には東京ビッグサイトでの製造展に出展し、多くの業界関係者に新製品を紹介する予定です。
この革新により、医薬品の包装は質の高いものとなり、医薬品管理の新たなスタンダードを築いていくでしょう。
DNPは、透明、吸湿性、そして安全性を兼ね備えた医薬品包装の未来を築くために、さらなる研究開発を続けていく所存です。ぜひ、今後の進展にご注目ください。