大阪工業大学が提供する百済寺跡WebAR体験ガイド
大阪工業大学は、百済寺跡(中宮西之町)という特別史跡の復元を目的とした新たな試みを発表しました。約1250年前の奈良時代に創建された百済寺の姿を表現する「百済寺跡WebAR体験ガイド」を、枚方市と協力して開発し、2025年3月末から運用が開始されます。訪れる人々は、自身のスマートフォンやタブレットを使用して、Webブラウザで百済寺の歴史を3DのARとして体験することができます。
AR体験の仕組み
「百済寺跡WebAR体験ガイド」の利用者は、特別史跡の南側に設置された看板にあるQRコードを読み取ることで体験にアクセスできます。ガイドは大きく「百済寺跡復元ARシステム」と「ガイドシステム」に分かれています。
- - 百済寺跡復元ARシステムでは、スマートフォンのカメラを通じて、朱色の2塔と金堂が眼前に現れ、創建当時の百済寺の姿をフルに体感できます。ユーザーは、視点の高さや天候、季節を変えることができ、異なる景観を楽しむことも可能です。
- - ガイドシステムでは、音声ガイドを通じて、百済寺を建立した百済王氏の歴史を学ぶことができます。これにより、ただ見るだけではなく、歴史を知ることができるのが魅力です。
復元の意義と技術
百済寺跡は、奈良時代の伽藍配置をしっかりと再現した特別史跡であり、薬師寺や東大寺と同様の2塔1金堂式が採用されています。基壇の石組みについても当時の最先端の技術が取り入れられています。このプロジェクトは、古代の文化を現代に甦らせる重要な試みと言えるでしょう。
枚方市では、2025年に百済寺跡の再整備工事を完了させる予定で、中門や東塔などの復元作業が進んでいます。この取り組みにより、訪れる人々が奈良時代を身近に感じられる機会を提供します。
技術的な特長
情報科学部の学生たちは、特別史跡の普及を目指して、2021年から「百済寺跡・禁野本町遺跡の復元観光プロジェクト」に取り組み、CMで見かけるようなCG技術を駆使して3D復元を行いました。ユーザーは特定の地点から全方位をカメラで撮影することで、リアルな映像にAR情報をスマートフォンで実現できます。
また、このプロジェクトでは「事前生成型拡張現実感」の手法を利用しており、従来のAR方式に比べ、よりリアルで快適な体験を実現しています。
今後の展望
このプロジェクトについては、国際会議「NICOGRAPH International 2023」で最優秀ポスター発表賞も受賞しています。今後、特別史跡への関心を高め、地域の文化財の理解を深める一助となることが期待されています。
枚方市の文化財担当者は、「過去の建物をリアルにイメージし、地域の文化財への関心を高めることができれば嬉しい」とコメントしています。また、大阪工業大学は今後この技術がICT学習などに活用されることにも期待を寄せています。
アクセス情報
特別史跡・百済寺跡へは京阪交野線「宮之阪駅」から徒歩で10分の距離にあります。現地でスマートフォンを使った新たな歴史体験をお楽しみください。