新たな試み「NISSAN ANIMALERT PROJECT」
日産自動車株式会社は、岡山理科大学や日本大学、帯広畜産大学、奄美市、環境省などと連携し、ロードキルを防ぐ「NISSAN ANIMALERT PROJECT」を立ち上げました。このプロジェクトは、特に日本の奄美大島と徳之島に生息する絶滅危惧種のアマミノクロウサギに焦点を当てています。2025年12月21日、早稲田大学で開催された第30回『野生生物と社会』学会大会において、実証実験の進捗が報告されました。
プロジェクトの背景
ロードキルは交通事故の一種で、特に野生動物の生体に深刻な影響を与えます。奄美大島ではアマミノクロウサギのロードキル件数が増加しており、環境省の調査によると、2023年には過去最多の147件に達しました。これらのデータは絶滅危惧種の保護の重要性を実証しています。
忌避デバイスの開発
「NISSAN ANIMALERT PROJECT」では、クルマの接近を知らせる装置を活用し、動物に特化した高周波音を発生させる新しい技術が導入されています。この高周波音がアマミノクロウサギの忌避行動を引き出し、クルマとの衝突を未然に防ぐ狙いがあります。実証実験では、この技術の効果を評価するための走行データを収集しています。
プロジェクトの発表において、岡山理科大学の辻維周特担教授は高周波音を利用したデバイス「RK12」(通称:鹿ソニック®)を紹介し、実験車両として使用している軽EV「日産サクラ」の性能についても説明しました。日産サクラは最新のEV技術を駆使しており、静かな運転が可能です。
実証実験の内容
2024年12月から2025年2月にかけて行われた実証実験では、奄美大島の自然環境でアマミノクロウサギの反応をデータとして収集しました。具体的には、時速10kmで走行中に高周波音を流し、その際のアマミノクロウサギの行動の変化を観察しました。また、音響機器の修理や調査の進展に伴い、さらなる実験が予定されています。
実験結果の中間報告
実験は73回にわたって行われ、アマミノクロウサギの行動変化が観察されています。音を流した際、対象のアマミノクロウサギが移動する傾向が見られることが報告されており、今後もサンプル数を増やし、効果の検証を続けていく予定です。この取り組みは、専門家の監視のもと適切に実施されています。
課題と展望
各研究機関の専門家たちは、ロードキル対策の重要性を強調しています。どのように人と野生生物が共存していくかという課題は複雑ですが、研究者たちは新たな技術を用いてその解決に取り組んでいます。また、地元自治体や環境省とともにこの課題に取り組む姿勢が大切です。
まとめ
日産の「NISSAN ANIMALERT PROJECT」は、テクノロジーと野生生物保護の融合を目指す革新的な試みです。今後、このプロジェクトが実用化されれば、アマミノクロウサギだけでなく多くの動物の命を守る手助けとなるでしょう。実証実験の結果がどのように生かされていくか、非常に注目が集まっています。彼らの努力が実を結び、より安全で共生できる未来に向けて進展することを願っています。